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【東京】

充実感に笑顔いっぱい 高尾山で視覚障害者が登山

道幅が広いところではサポート役の健常者と並んで登る=八王子市の高尾山で

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 目が不自由でも、山に登れた−。全国から集まった視覚障害者約五十人が今月、サポートする健常者と高尾山(八王子市)の登山に挑んだ。しっかりとした足取りで山頂にたどり着くと、障害の有無には関係なく誰もが充実感でいっぱいの笑顔をあふれさせていた。 (竹谷直子)

 今回、高尾山を訪れたのは、視覚障害者の登山を支援する各地の団体が協力して、隔年で開いている「視覚障害者全国交流登山大会」の参加者。十六回目となる今年の大会は六〜八日に八王子市内であり、七日に高尾山に登った。これまでは乗鞍岳(長野、岐阜)や比叡山(京都、滋賀)などに登ってきたが、「観光名所として名高い高尾山に行きたい」という希望が多かったという。

 視覚障害者約五十人と健常者百五十人が参加し、登山経験や体力に合わせて、難易度の異なる三つのコースに分かれて山頂(五九九メートル)を目指した。

 山道では視覚障害者を真ん中に、健常者が前後を挟む三人一組の縦列で進むのが基本。視覚障害者は前を歩く健常者のリュックに付けたロープを持ち、「今から階段です」「何段くらい?」「うーん、十段くらい」というやりとりを続ける。ほとんど登山経験のない記者は、初心者コースでもついていくのがやっとの速さで「大丈夫かー」と気遣う声までかけられた。

 途中では、大木に触れたり、「これギンナンのにおい?」「ほんとだ、落ちてる」と会話を弾ませたり。頂上に到着すると、みな笑顔になり、拍手がわいた。見晴らし台で「富士山が見えるよ」と伝えられると、うれしそうな表情を見せる視覚障害者もいた。

 広島市の橋本全十郎(のりじゅうろう)さん(73)は四十代のころに全盲となり、普段は外に出ることも少ないという。視力を失うまではソフトボールの社会人チームで投手もしていたスポーツ好き。「ここはみんなよくしてくれて人間関係がいい。健康のためにも山登りを続けたい」と話した。

 高難度のコースに参加した杉並区の小平奈美子さん(44)は、視力の低下とともに外出が怖くなったころに登山と出合い、今では毎週山登りに出掛けている。「孤独に耐えられなくなりそうだったけれど、たくさんの仲間が救い出してくれた感じ。将来は海外の山に挑戦してみたい」と声を弾ませた。

 大会実行委員会の事務局長新海吉治さん(71)は「登山ができたという自信から、電車に一人で乗るなど、社会に前向きに関わるようになった視覚障害者が増えたと感じます」と話した。

 

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