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【東京】

<ひと ゆめ みらい>無駄省き 機能美を追求 家具製造会社「コマ」社長・松岡茂樹さん(41)

製作中の椅子にカンナをかける松岡茂樹さん=武蔵村山市で

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 シュッ、シュッ、シュッ−。社長を務める家具製造会社「KOMA(コマ)」(武蔵村山市)の工房に、木を削る音が響いた。製作中の椅子を見つめ、大小さまざまな刀やカンナを持ち替えながら形を整えていく。大正時代の職人の家族から譲り受けたカンナを手にすると「道具を見れば、職人の腕の良さが分かる」とうなずいた。

 練馬区生まれ。高校卒業後に自立しようと一人暮らしを始めたが、すぐに生活苦に直面した。「電気やガス、水道料金が払えず、近くの公園に水をくみに行ったこともあった」と笑う。

 あるとき、アパートの部屋の天井に日焼けのような跡をみつけた。以前の住人の美大生が描いた作品と知り、小学生のときに絵を描くのが得意だったのを思い出す。それを機に、友人が通う美術予備校の講義に潜り込み、デザインの基本であるデッサンを学んだ。講師から「すごいぞ」と高評価を受け、自信を深めた。「自分の中の点と点が線でつながった」

 父親に支援を頼み、インテリア・建築の専門学校に通った。「表現したい物を一から全て作りたい」と、家具職人になることを決意。二〇〇〇年に埼玉県吉川市の家具製造会社「日田工芸」(廃業)に入社した。面接試験で「三年で独立する」と宣言し、社長らをあきれさせたという。

 そこは昔ながらの職人の世界だった。ベテランの仕事や道具を盗み見て、技術や知識を身に付けた。仕事以外に「一カ月に椅子一脚」のノルマを自身に課し、毎日の就業時間前後に作業場を借りて作り続けた。作品はコンペで受賞し、製品開発の仕事も任されるようになったが、宣言通り約三年で独立。仲間三人でKOMAを設立した。

 家具作りで追求するのは機能美だ。椅子の場合、座り心地の良さや持ちやすさ、強度を第一に考え、そこからデザインの無駄を省いていく。ウオールナットやチェリーなどの無垢(むく)材を使い、体のラインに沿った微妙な曲線を削りだす。一点物の注文家具にも応じているが、オリジナルデザインの量産品も一点物と変わらぬ品質に仕上げている。

 従業員十人は若手ぞろい。毎月一回、工房で料理を味わいながら家具作りのアイデアを出し合っている。「修業時代に感じた幸せな気持ちや、ものづくりの楽しさを若い人たちにも伝えたい」とほほ笑んだ。 (服部展和)

<松岡茂樹さんの家具> 朝日現代クラフト展、日本クラフト展、「WOOD FURNITURE JAPAN AWARD」、ウッドデザイン賞などで受賞・入選。日本が誇るべき優れた地方産品として経済産業省が認定する「The Wonder 500」や、武蔵村山市のふるさと納税の返礼品にも選ばれた。KOMA直営店(杉並区上荻1の24の10)=電03(6383)5585=で購入できる。

 

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