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【親子でぶらり 学べるスポット】

旧醸造試験所第一工場(東京都北区) 日本酒の近代化醸した産業遺産

明治時代に建てられた旧醸造試験所の赤煉瓦の建物=東京都北区滝野川で

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 日露戦争は日本酒で戦ったといわれる。明治時代、国内産業の育成が遅れ、産業らしい産業が存在しなかった。酒蔵が納める酒造税が大正時代まで国税の税収第1位だったのだ。今では焼酎やワインに押され消費が減少している日本酒だが、その歴史を学ぶことには学習的な意義がありそうだ。

 都電荒川線飛鳥山駅の西約200メートルにある旧醸造試験所第一工場は明治の酒造業の隆盛ぶりを今に伝える貴重な建物だ。日露戦争が開戦した1904(明治37)年、旧大蔵省醸造試験所の清酒醸造試験工場として建てられた。ドイツのビール工場をモデルに、明治建築界の巨頭の一人、妻木頼黄(よりなか)が設計し、通称「赤煉瓦(れんが)酒造工場」と呼ばれた。日本酒造りの近代化を推し進めた明治の産業遺産は2014(平成26)年に国の重要文化財に指定されている。

 日本酒は世界にも類を見ない「並行複発酵」という高度な技術で造られる。かつて“醸造の神様”といわれた坂口謹一郎氏は「一大芸術的創作」と評した。試験所は、醸造方法の研究や日本酒の品質改善を目的に設立され、日本酒造りに欠かせない酒母の開発などを行ったほか、明治時代から全国新酒鑑評会(当時は全国清酒品評会)を開催してきた。

 1995年、試験所は広島県東広島市に移転し、国税庁醸造研究所に名称変更した。2001年には独立行政法人酒類総合研究所に移行した。業界関係者らから“滝野川”として親しまれた赤煉瓦の建物は現在、公益財団法人日本醸造協会が管理している。

 毎秋には内部を一般公開しており、工場内の旧ボイラー室や半円形状に煉瓦を積んだ耐火床など当時の施設を見学できる。古代から日本人が培ってきた技術を知ることのできる貴重な機会になっている。 (土田修)

◆ひとこと

 日本酒造りの向上をめざして設立されたのが醸造試験所だ。その目的は税収のアップにあり、残念なことに、その多くが日露戦争の戦費に充てられた。

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 ★メモ 北区滝野川2の6。JR、地下鉄南北線王子駅徒歩約8分。都電荒川線飛鳥山駅からは徒歩約6分。滝野川は幕末に大砲の製造所が設置された。その敷地に醸造試験所が置かれたのは、水利が良く、王子停車場(現王子駅)から近かったからだ。第一工場では、蒸米、製麹(せいぎく)、仕込み、発酵、貯蔵の作業が行われた。毎年10月末から11月初めに東京文化財ウイークの特別公開がある。問い合わせは東京都教育庁地域教育支援部管理課=(電)03・5320・6862=へ。

●足を延ばせば…

 ★紙の博物館 北区王子1の1の3 飛鳥山公園内。JR王子駅徒歩約5分。和紙・洋紙を問わず、古今東西の紙に関する資料を収集・保存・展示する博物館。3つの展示室に分かれ、第1の「現代の製紙産業」では、紙の原料・製造工程、製造機械などを展示。第2の「紙の教室」では紙のしくみとリサイクルについて解説。第3の「紙の歴史」では、紙の誕生、伝播(でんぱ)、和紙の歴史などを展示。入館料大人300円、小中高生100円。原則月曜と祝日の翌日休館。開館10〜17時。(電)03・3916・2320

 ★渋沢史料館 北区西ケ原2の16の1。飛鳥山公園内。傑出した実業家・渋沢栄一の活動を紹介する博物館。入館料大人300円、小中高生100円。原則月曜休館。開館10〜17時。(電)03・3910・0005 

 

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