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【親子でぶらり 学べるスポット】

つりしのぶ萬園(東京都江戸川区) 涼を届ける江戸のお中元

よしずで覆われた3段の棚にはシノブを茂らせたつりしのぶがずらり。出荷前に作品をチェックする深野さん

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 つりしのぶは夏の風物詩のひとつ。酷暑のなかでいっときの涼が欲しくて、東京都江戸川区にある「つりしのぶ萬園(よろずえん)」を訪ねた。つりしのぶは江戸時代、庭師が馴染(なじ)みのお屋敷に中元として贈ったのが始まりだとか。いま都内で作製しているのは同園だけになってしまった。

 2代目の深野晃正(てるまさ)さん(77)が作ったつりしのぶがよしずに覆われた棚にびっしり並ぶ。ざっと1500点はあろうか。深野さんが「森の小玉」と名付けたしのぶ玉をはじめ三日月や井げた、屋形船など形はさまざま。すべてが緑鮮やかなシノブを茂らせる。風鈴を垂らし、家の軒先につるせばさわやかだろう。

 つりしのぶの作り方は、基本的には竹や針金を芯にしてハイゴケ(這苔)を巻きつけ、その上にシノブの根茎をはわせて銅線で固定する。春にはシノブが芽吹き、盛りの夏を迎える。

 材料集めには苦心している。採集のために入れる山はさほど多くない。シノブが自生するのは岩肌だったり大木の枝先だったりするから命懸けだ。「山は暖かい時季だと虫は出るしスズメバチもマムシもいる。寒くならないとダメ。思うほど採れなけりゃ野宿することもあるよ」と深野さん。つりしのぶ職人が消えていくのもうなずける。

 芯に使う竹も「寒い時季に刈った“寒切り”がいちばん。暖かいときだと、中に虫が入っている可能性があるからね」。寒いときに大いに苦労して、初夏から大いに売り出す。

 売値は意匠や材料の使用量に応じて2800円から3万8000円まで。地元のイベントはもちろん、各地の百貨店にも出店している。よく売れるのはどこ? 深野さんは「やっぱり名古屋だね。大きくて高いのが売れるんですよ」。 (小鷲正勝)

◆ひとこと

 「お客さんには、丹精込めて水をやってくれれば3年、5年ともちますよ、って言ってます」と深野さん。手入れの仕方を説明した紙片を渡して読むように伝えている。

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 ★メモ 東京都江戸川区松島1の32の11、JR新小岩駅、または都営新宿線船堀駅から都バスで「京葉交差点」下車、徒歩5分。先代深野高司(たかもり)氏が1935年3月にこの地で創業した。即売のほか、工房見学が可能。春先を中心に体験教室(事前連絡必要)も。1回につき4〜10人が制作体験できる。材料費込みで2000〜3000円。工房見学は繁忙期(6〜9月)には難しい場合がある。工房の休みは不特定。(電)03・3651・3465

●足を延ばせば…

 ★一之江名主屋敷 江戸川区春江町2の21の20、JR小岩駅または都営新宿線瑞江駅から京成バス「名主屋敷」下車。江戸時代初めに一之江で新田を開いた名主・田島家の屋敷。曲り屋の主屋は安永年間(1772〜1781年)に再建された。屋敷林や堀をめぐらし、中世の土豪の屋敷構えを思わせる。入館料大人100円、中学生以下無料。原則月曜休館。(電)03・5662・7176

 ★大雲寺 江戸川区瑞江4の11の5、都営新宿線瑞江駅から徒歩10分。1620年に台東区蔵前で創建されたが、1668年の寛文の大火で焼失。墨田区業平に移ってから、さらに1923年の関東大震災で焼失したのち、現在地に。坂東彦三郎や中村勘三郎の累代墓など歌舞伎役者の墓が多く、別名「役者寺」とも。(電)03・3679・5748

 

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