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【国際】

首相、核先制不使用に反対 米に伝達 米紙報道

 【ワシントン=後藤孝好】米紙ワシントン・ポストは十五日、オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用を巡り、安倍晋三首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」として、反対の意向を伝えていたと報じた。

 同紙によると、首相は最近、ハリス氏に対して、オバマ氏が核兵器の先制不使用を宣言した場合、北朝鮮などの国への抑止力が低下し、地域紛争のリスクが高まるとの懸念を直接、伝達したという。伝えた日時や場所には触れていないが、首相は七月二十六日、来日したハリス氏と首相官邸で会談している。

 日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器の廃絶を国際社会に訴えている。一方で、日米安全保障条約の下、米国の「核の傘」に依存しており、国連での核兵器禁止条約の制定議論にも消極的な姿勢を示している。

 米国の核先制不使用宣言の検討に対しては、日本だけでなく、英国やフランス、韓国などが反対の意向を伝えているという。ケリー国務長官やカーター国防長官ら有力閣僚も「核の傘」に依存する同盟国の不安を招くなどとして反対の立場とされ、核政策の変更の見通しは立っていない。オバマ氏は、核実験の禁止を呼び掛ける国連安全保障理事会決議の採択や核近代化予算の削減なども検討している。

◆広島・長崎憤りの声

 オバマ米政権が検討している核兵器の先制不使用政策に安倍晋三首相が反対の意向を伝えたと米紙が報じたことを受け、広島、長崎の被爆者から十六日「被爆地の思いに逆行する」と憤りの声が上がった。

 広島県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)の大越和郎(かずお)事務局長(76)は「核の先制不使用は核廃絶を求める被爆者や非核保有国の思いに沿った政策だ。安倍首相は保有国以上に核に依存している。けしからん」と強く非難した。

 安倍首相は反対する理由として、核開発を続ける北朝鮮などに対する核抑止力に影響が生じることを挙げたが、大越氏は「北朝鮮は核実験を繰り返している。抑止力にはなっていない」とくぎを刺した。

 九日の長崎の平和祈念式典で被爆者代表を務め、安倍首相と面会した井原東洋一(とよかず)さん(80)は「日本政府は口では核兵器廃絶を訴えながら、実際の行動は反している。国際社会から信頼を失ってしまうのではないか」と指摘した。

 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の和田征子事務局次長(72)は、五月のオバマ氏の広島訪問に同行し「核兵器のない世界を必ず実現する」と表明した安倍首相の矛盾した姿勢を批判した上で「核先制不使用だけでは核攻撃による報復を制限したことにならない。核廃絶が絶対だ」と話した。

 <核の先制不使用> 敵の核攻撃を受けない限り、核兵器を使用しないとの政策。現在、米ロ英仏中の五大核保有国のうち先制不使用を宣言しているのは中国のみ。オバマ米政権は2010年の「核体制の見直し(NPR)」で、核拡散防止条約(NPT)を順守している非核国には核攻撃を行わないと明記したが、先制不使用は宣言しなかった。 (共同)

 

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