東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 国際 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【国際】

「軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を生む」 ストリープさんに共感の声

写真

 【ニューヨーク=北島忠輔】米ハリウッドを代表する女優メリル・ストリープさん(67)が八日のゴールデン・グローブ賞授賞式で、トランプ次期米大統領の差別的な言動を「軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を駆り立てる」と痛烈に批判した。トランプ氏はツイッターで、ストリープさんを「ハリウッドで最も過大評価された女優の一人だ」とののしったが、ハリウッドではストリープさんに共感する声が広がっている。

 ストリープさんはスピーチで、トランプ氏を名指しすることは避けつつ、「わが国で最も尊敬されるべき地位に就こうとする人が、身体障害のある記者のまねをした」と非難した。米紙ワシントン・ポストなどによると、トランプ氏は二〇一五年十一月、南部サウスカロライナ州の支援者集会で演説中、以前取材を受けた記者を批判。その際、関節拘縮症のため腕に障害のある記者をからかうようなポーズを見せた。

 ストリープさんは時に声を震わせながら「権力者が自分の立場を利用して他の人々をいじめれば、われわれは全員敗者となる」と強調。「信念を持った記者がわれわれには必要だ」と権力を監視するメディアの重要性を訴えた。

 トランプ氏は九日、ツイッターで「からかっていない」と反論。さらにストリープさんを大統領選で敗北したヒラリー・クリントン氏の「召し使い」とやゆした。

 ストリープさんのスピーチ後、ハリウッドの俳優らからは称賛の声が相次いでいる。アナ・ケンドリックさんは「彼女より素晴らしい人がいるだろうか」、アリッサ・ミラノさんは「あなたの発言は私に力を与えてくれた。ありがとう」とツイッターに書き込んだ。

 <メリル・ストリープ> 1949年、米ニュージャージー州生まれ。エール大学演劇大学院を修了後、77年、「ジュリア」で映画デビュー。2作目でロバート・デニーロさんと共演した「ディア・ハンター」(78年)でアカデミー賞助演女優賞に初ノミネートされて以来、喜劇から社会派作品まで幅広く演じ、アカデミー賞に計19回ノミネートされている。

 このうち「クレイマー、クレイマー」(79年)で助演女優賞、「ソフィーの選択」(82年)、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(2011年)でそれぞれ主演女優賞を受賞。他にも「マディソン郡の橋」(95年)、「プラダを着た悪魔」(06年)など人気作品に出演。大ヒットミュージカルを映画化した「マンマ・ミーア!」(08年)では、美しい歌声を披露し、「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」(16年)では、ソプラノ歌手を目指す「絶世のオンチ」を演じた。昨年7月の民主党大会でヒラリー・クリントン氏の応援演説をした。

◆<ストリープさんスピーチの詳報>「権力者が他の人々をいじめれば、われわれは全員敗者」

 【ニューヨーク=北島忠輔】米女優メリル・ストリープさんのゴールデン・グローブ賞授賞式でのスピーチ詳報は次の通り。

 (グローブ賞を主催する)ハリウッド外国人映画記者協会のみなさん、ありがとう。まさにここにいる私たち全員が今、米国社会で中傷されています。考えてみてください。ハリウッド、外国人、そして記者…。私たちは何者か。ハリウッドとは一体何なのか。それはただ、さまざまなところから、多くの人々が集まっているだけなんです。

 ハリウッドには部外者と外国人があふれています。もし、彼らを全員締め出したら、フットボールとマーシャルアーツ(総合格闘技)以外に見るものはなくなるでしょう。それはアーツ(芸術)ではありません。

 俳優の仕事はただ一つ、自分たちと異なる人生に入り、見る人がどう感じるか感じてもらうことです。そしてこの一年間、情熱的で力強い、息をのむようなパフォーマンスが数多くありました。

 しかし、私はある一つのパフォーマンスに衝撃を受けました。それは私の心に突き刺さったままです。決して素晴らしかったからではありませんが、それは人々の目を引きました。

 意図的に集められた聴衆を笑わせ、敵意をむき出しにさせたのです。わが国で最も尊敬されるべき地位に就こうとする人が、身体障害のある記者のまねをした瞬間でした。記者よりも特権、権力があり、反撃する能力もはるかにしのぐ人物が、です。それを見たとき、私の胸は張り裂けそうになりました。今でも頭から離れません。それが映画ではなく、現実世界の出来事だからです。

 こうした衝動的な侮辱を公の舞台で権力のある人物が演じれば、それはすべての人々の生活に浸透します。なぜなら他の人々も同じことをしていいという、ある種の許可証を与えるからです。

 軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を駆り立てます。権力者が自分の立場を利用して他の人々をいじめれば、われわれは全員敗者となります。

 これは記者にも通じる話です。説明する力を持ち、権力者のあらゆる横暴を批判する、信念を持った記者がわれわれには必要です。だからこそ、建国の父たちは報道の自由を憲法に記したのです。

 ですから私はこれだけはお願いしたい。裕福で知られるハリウッド外国人映画記者協会と、すべてのハリウッドコミュニティーのみなさん、どうか私に加わって(世界の言論弾圧を監視する民間団体の)ジャーナリスト保護委員会(CPJ)を支援してください。われわれが前進するには彼らが必要になるからです。彼らは真実を守るためにわれわれを必要とするからです。

 私の友人で、亡くなった親愛なる(映画スター・ウォーズの)レイア姫(故キャリー・フィッシャーさん)は、かつて私にこう言いました。

 「傷ついた心を芸術につくり替えていきましょう」

 ありがとうございました。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報



ピックアップ
Recommended by