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【国際】

油田都市 利権めぐり対立 キルクーク イラク・クルド独立 あす住民投票 

21日、弾痕が残る事務所前で、襲撃事件を振り返る「トルクメン国民運動」のアガオグロ事務局長=奥田哲平撮影

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 【キルクーク(イラク北部)=奥田哲平】イラクのクルド人自治区で二十五日に迫った分離独立を問う住民投票を巡り、北部の油田都市キルクーク州の行方に注目が集まっている。区域外にありながら、二〇一四年以降に実効支配するクルド自治政府が住民投票の範囲に組み込んだからだ。多数派を占めるクルド人と少数派との民族間で衝突の懸念が高まっている。

 十八日夜、市中心部にあるトルコ系住民のトルクメン人による「トルクメン国民運動」の政党事務所前に車四、五台に分乗した若者がクルドの旗を振って現れた。建物に向かって自動小銃を撃ち始め警備員が応戦、若者一人が死亡した。

 アガオグロ事務局長によると、住民投票への反対を表明する政党は、二日前にイラク内務省に保護を強めるように抗議文を出したばかり。「周到に計画され、クルドの治安部隊は彼らを見過ごした」と非難。「民族や宗派の多様性がイラクの美しさだったのに、緊張は高まる一方だ」と嘆く。

 原油利権を巡り自治政府とイラク中央政府が長年対立してきたキルクーク。過激派組織「イスラム国」(IS)の混乱に乗じ、自治政府の治安部隊が石油施設も含めて武力制圧した。独自にパイプラインを敷設し、イラク全土の17%に当たる一日五十万バレルを産出、ほとんどを輸出している。自治区の富を生み出す「戦果」で、住民投票を機に自治区内への編入を狙う。

 キルクークでは一九七〇年代、クルド人とアラブ人を入れ替える「アラブ化政策」で強制移住が行われたが、二〇〇三年に旧フセイン政権が倒れると、クルド人が徐々に帰還。クルド人にとってはもともといた土地を取り戻す動きが、排除されるとの他民族の恐怖感を高めている。

 アラブ人社会を代表する元副州知事のハディディ氏は「力で支配したフセイン政権と同じ手法ではないか」と憤る。これに対し、クルド系のタラバニ州議長は「治安が安定し、経済発展する自治政府に入る方が、全ての人にとって有益だ。われわれは共存できる」と主張する。

 イスラム教スンニ派が多いトルクメン人、アラブ人勢力が口をそろえるのは、「キルクークがクルドでも中央政府でもない特別州」として自治権を拡大すること。背景にはシーア派中心の中央政府に対する不満がある。クルド独立の是非を問う住民投票は、さらなる国家分裂の引き金になる危険性もはらんでいる。

 

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