東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 国際 > 紙面から > 10月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【国際】

「重力波」に物理学賞 ノーベル賞 初観測の米3氏

 【ストックホルム=共同】スウェーデンの王立科学アカデミーは三日、二〇一七年のノーベル物理学賞を、二つのブラックホールが合体して放出された「重力波」を世界で初めて観測した重力波望遠鏡「LIGO(ライゴ)」のチームを率いる米マサチューセッツ工科大のレイナー・ワイス名誉教授(85)、米カリフォルニア工科大のキップ・ソーン名誉教授(77)とバリー・バリッシュ名誉教授(81)の三人に授与すると発表した。観測からわずか二年のスピード受賞。

 重力波は、物体が動くと周りの空間が伸び縮みし、ゆがみが波のように宇宙に広がる現象。重力波を観測すれば、光や電波で捉えることができない天文現象を探ることが可能で将来は宇宙誕生の謎に迫ることもできると期待される。日本の重力波望遠鏡「かぐら」(岐阜県飛騨市)を含め世界中で観測ネットワークが構築中。天文学の新たな分野を切り開いたと評価された。

 チームは一五年九月十四日、十三億光年先にある二つのブラックホールが合体して起きた重力波を観測するのに成功した。ワイス氏はノーベル財団との電話インタビューで「重力波を観測しようと四十年間も考え続けてきた。観測した時はとても興奮した」と述べた。

◇受賞者の経歴(共同)

 レイナー・ワイス氏 1932年、ドイツ生まれ。85歳。マサチューセッツ工科大名誉教授。LIGO設立者の一人で、観測装置の製作を指揮した。

 バリー・バリッシュ氏 36年、米国生まれ。81歳。カリフォルニア工科大名誉教授。LIGOの統括責任者を務めた。

 キップ・ソーン氏 40年、米国生まれ。77歳。カリフォルニア工科大名誉教授。LIGO設立者の一人。

◆日本人科学者も貢献

写真

 重力波をとらえるための基礎研究には日本も大きく貢献した。

 ノーベル物理学賞の受賞が決まったキップ・ソーン氏らは一九七〇年代、いち早く重力波観測の必要性を訴えた。観測のためにはどんな重力波が来るのかコンピューターで予測しておく必要があるが、当時は詳しいことは分からなかった。ブラックホールや重力波を導くアインシュタインの相対性理論が複雑で、うまく計算できなかったからだ。

 その中で、当時は大学院生だった中村卓史(たかし)・京都大名誉教授を中心とする研究者らが、複雑な四次元の時空を二次元や一次元に分けて計算する「2+1+1形式」という方法を編み出し、ブラックホールが生まれる様子を計算することに成功。工夫次第で相対性理論の計算ができることを示した。

 また九〇年代後半には、応用範囲の広い「BSSN形式」と呼ばれる計算法を開発。中性子星が合体して放出される重力波を計算し、相対性理論をもとにした重力波の精密な計算に道を開いた。

 相対性理論の計算は、観測された重力波のデータ分析にも役立ち、密度の高い中性子星の性質や、膨大なエネルギーを出すガンマ線バーストなどの謎を突き止める重要な手段になると期待される。

 BSSN形式の開発者の一人、柴田大(まさる)・京都大基礎物理学研究所教授は「四十年以上も努力してきたソーンさんらの受賞が決まりよかった。今後もいろんな発見が続くはずだ」と喜んだ。 (永井理)

 <重力波望遠鏡LIGO> アインシュタインが予言した重力波を捉えるため、米国の2カ所に建設された観測施設。一辺の長さが4キロある巨大なL字形をしている。真空パイプの両方向に中央からレーザー光を放ち、先端の鏡で反射して戻ってきた光が干渉する様子を調べる。一辺の長さが重力波の影響で変化すると、光が戻る時間にずれが出て分かる仕組み。1994年に建設開始。2002〜10年の運用では観測できなかったが、性能を高めて15年に再開し、重力波の観測に成功した。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報