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【国際】

<習一強の現場から 中国共産党大会> (2)強権

北京の大紅門市場で9月末、立ち退きを巡って話し合いを続けるカーテン業者ら

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 「突然出てけなんて許せない」。九月二十六日、天安門広場近くの北京市政府に陳情に来た四川省出身の鄭柏林(ていはくりん)(38)は頭を抱えた。

 北京市南部の豊台区にある衣料品などを扱う大紅門市場のうち、カーテンの小売業者ら約三百店が軒を連ねる市場が九月、立ち退きの対象になった。

 「早く出て行け。さもないと商品を全部外に投げ出すぞ」。湖北省から出稼ぎに来た朱麗芳(しゅれいほう)(45)は、市場をうろつく区や大家の意を受けた威圧的な警備員におびえる。北京に来て二十年。「四月に三年の営業保証金を納めたばかり。子どもは故郷に帰すしかない」と話し、怒りをぶちまけた。

 北京では今、大規模な都市改造が進む。二〇二〇年の人口を二千三百万人に抑え、首都機能を充実させる計画だ。きっかけは今年二月、国家主席の習近平(しゅうきんぺい)の視察。「国際的な一流都市を目指し、人口を抑えて大気汚染や交通渋滞を解消しなくてはならない。二二年に開かれる北京冬季五輪までにだ」。檄(げき)を飛ばした。

 五月。北京市トップの市共産党委員会書記に昇格した蔡奇(さいき)は、猛烈なスピードで計画を進め始める。違法建築を一掃するという名目で、市民に人気の肉まんや冷麺などの店が看板をはがされ、ショベルカーで壊されて次々と姿を消す。十八日からの党大会を前に、アクセサリーなど小物を扱う市場も閉鎖になった。

 蔡は命じた。「一刻も早く、低レベルな業者を淘汰(とうた)し追い出せ」。底辺で首都を支えてきた地方の出稼ぎ労働者、つまり北京に都市戸籍を持たない人々を追い出し人口を減らす方針だ。

 福建、浙江の両省で習を支えた腹心で、ヒラ党員からトップに抜てきされた蔡。「習の重要思想」という表現を他の幹部に先駆けて使い、習に忠誠を尽くす発言を繰り返す。

 五年で八千六百人以上の局長級幹部を摘発した前例のない「反腐敗運動」を通じ、習は党の「核心」に位置付けられた。新聞やニュースの一面は連日、習の話題から始まる。個人崇拝に近い状況が生まれている。

 実は、区や市の担当者も陳情者らに非を認めている。「私たちのミスだ。こんなに早く政策が変わるとは思わなかった」。しかし、上級の幹部に異を唱えることはできず、立場が弱い業者に立ち退きを迫らざるを得ない。

 「国の政策は理解するが、こんなに急に追い出されるなんて。北京の発展に貢献してきたはずなのに、私たちは低レベルなのか」。鄭は人生を否定されたような悲しい表情を浮かべた。 =敬称略、労働者は仮名

 (北京・安藤淳、写真も)

 

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