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【国際】

<習一強の現場から 中国共産党大会> (3)香港の焦り

香港中文大学でチラシに殴り書きされた「香港は中国ではない」「中国の侵略を止めろ」などの主張

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 香港中文大学の掲示板に張られたチラシの上に、英語で「香港は中国ではない」「中国の侵略を止めろ」と殴り書きがしてある。

 九月初めから学内に掲げられていた「香港独立」の横断幕は何者かに持ち去られていた。撤去の背後には、中国の意向があるとみられている。殴り書きの乱れた文字に、主張を封じられた学生の悔しさがにじむ。

 九月に入学したばかりの男子学生(18)は「独立派は支持しない」と前置きしながらも、「自由な言論に圧力をかけるやり方には反対する。これでは香港が中国の支配地域になってしまう」と不快感を口にした。

 香港の著名な政治アナリスト、劉鋭紹(りゅうえいしょう)(63)は「〓小平(とうしょうへい)時代は分裂活動さえしなければ、何を言っても構わなかった。今は独立を議論することもできない」と自由な空間が狭められていく現状を嘆く。

 国家主席の習近平(しゅうきんぺい)の香港政策は、七月の返還二十年式典演説に集約される。「一国二制度を堅持する方針は変わらない」と述べる一方で「一国が根であり、根が深く張った木に葉が生い茂る」と強調。国家統一が香港の「高度な自治」に優先することを鮮明にした。

 今月三日、行政長官の林鄭月娥(りんていげつが)は、ある法案を二十五日に立法会(議会)に提出する方針を発表した。香港と広東省広州市を結ぶ高速鉄道の香港側終着駅「西九竜(クーロン)駅」に、香港と中国双方の出入境管理施設を設置するもので、来秋の運用開始を目指す。

 一つの駅で出入境手続きができ、旅客の利便性は高まるという触れ込みだ。同時に、香港域内で中国当局が警察権を行使できるようになるという問題をはらむ。民主派政党、公民党の立法会議員、陳淑荘(ちんしゅくそう)(46)は「返還後二十年、こんな話は聞いたことがない。香港の『高度な自治』が脅かされる」と反対の先頭に立つ。

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 ただ、香港中文大学の世論調査によると、55%が施設建設に賛成し、「一国二制度に直接影響を与える」と答えたのは8%にとどまった。陳は「反対の声が高まるには時間がかかる」と言うが、理解が広がらないことに焦りは隠せない。

 香港国際空港近くで、香港と広東省珠海市、マカオを結ぶ海上橋が年内完成を目指し、建設が進んでいた。世界最長と言われる全長五十五キロの橋で、形はほぼ出来上がり、威容を見せている。

 「珠海に三十分くらいで行けるようになる。香港経済も潤うはずだ」と案内してくれたタクシー運転手は完成を待ち切れない様子だ。中国最大の製造業集積地である広東省と短時間でつながる利点は大きいが、香港と中国本土との経済的一体化も加速する。アメとムチを使い分けながら、中国は香港を着実にのみ込みつつある。=敬称略(香港で、浅井正智、写真も)

※〓は登におおざと

 

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