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【国際】

モスル帰還 わずか3割 イラク、ISから解放3カ月

モスルの復興の様子を語るラークさん。車から身を乗り出し、結婚式を祝う若者たちの車列がそばを通り過ぎた

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 過激派組織「イスラム国」(IS)のイラクでの最大拠点だった北部モスルが解放されて九日で三カ月。戦渦から逃れた国内避難民約百万人のうち、帰還できたのは三割にとどまる。生活再建が急務となる中で、肝心の治安維持の担い手は、イラク軍に代わって宗派も異なる大小さまざまな民兵組織が入り交じる複雑な状況。住民の不安が増している。 (モスルで、奥田哲平、写真も)

 九月下旬に訪れたモスル東部。結婚式用に飾った車列が、クラクションを鳴らしながら街を通り抜けた。IS支配下では許されなかったお祝いだ。「生活は戻りつつあるが、恐怖は消えない。ISがいなくなったのはよいとして、誰が街を統治しているのか分からない」。レストランの店長ラークさん(27)の表情はさえない。

 住民らによると、イラク軍が奪還作戦を終えて転戦すると、街にはイスラム教シーア派の民兵「人民動員隊」やスンニ派の地元部族の民兵、イラク内務省の治安部隊などが統制なく散らばり、危うい均衡が続く。ISの残党が市民に紛れ込んでいる可能性も高く、「夜になると、誘拐や殺人が横行している」とラークさんは語る。

 モスルはスンニ派の住民が多く、シーア派政権のスンニ派に対する抑圧的な姿勢が、三年前にISの浸透を容易にした背景にある。モスルに通じる検問所には人民動員隊が配置され、シーア派の最高権威シスタニ師の写真が飾られる。

 クルド自治政府の治安部隊ペシュメルガとして、モスルとの境界を警備するホルシェ司令官は「人民動員隊は前線に兵士や重火器を増やしている。ISに続く脅威と認識している」と警戒心をあらわにした。

 一方、ISが最後まで立てこもって破壊し尽くされたモスル西部は、住宅の再建がほとんど手付かずのまま。住民によると、今でも遺体ががれきの下敷きになっているという。帰還できない住民は、周辺の避難民キャンプなどに約八十万人が暮らす。

 今年三月に西部を脱出したジャマールさん(17)は、警察官だった父がISに殺され、自らも三回拘束されて、むち打ちの拷問を受けた。戦闘員になるように強要された小中学校の同級生の多くが亡くなった。ジャマールさんは「まだ危険な上に仕事もない。モスルには戻りたくない」と隣国トルコで働くことを望む。

 

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