東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 国際 > 紙面から > 10月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【国際】

<習一強の現場から 中国共産党大会> (4)政治主導 地域に明暗

中国河北省張家口市の河鋼集団宣鋼公司。移転が決まり従業員には不安が広がっている

写真

 「いつ移転するのやら。何も知らされていない」。河北省張家口市にある国有企業系の鉄鋼会社「河鋼集団宣鋼公司」。作業員楊成熙(ようせいき)(45)=仮名=は、たばこを吸いながら不安そうに口を開いた。創業九十七年、従業員約二万人を抱える大企業が製鉄所移転を決めたのは今年九月だった。

 移転先は三百キロほど離れた沿海部にあり、同じく鉄鋼が盛んな同省の唐山市。河北省政府は過剰生産解消のため、省内にある鉄鋼会社の合併に躍起だ。

 だが、一方的な指示に従業員の不満は募る。二十数年働いてきた楊は嘆く。「今年に入ってから業績はいい。多くの鉄鋼会社が生産を停止して市場も安定してきたのに…」。同僚の張志剛(ちょうしごう)(38)=仮名=も怒りをにじませる。「子どもや年老いた親を残して地元を離れられない。国の政策は理解しているが、最後のツケが自分たちに回ってきている」

 二〇〇八年のリーマン・ショック後、中国政府は四兆元もの景気刺激策を打った。しかし、鉄鋼や石炭、セメントなどの大幅な増産は、逆に過剰生産を生む元凶になる。特に「鉄余り」に対し、各国の批判は集中。過剰生産の解消と国有企業の改革は、待ったなしの課題になった。

 昨年九月、鉄鋼最大手の宝鋼集団(上海市)と武漢鋼鉄集団(湖北省)が統合を発表し、世界二位の巨大メーカーが誕生した。今年四月には政府が「国の基準に達していない」として製鉄会社七十社に廃業を指示。大胆な合併と統廃合で国有企業の再生を目指す一方で、地域の雇用は軽視され続けている。

 習近平指導部は経済成長の減速を容認する「新常態(ニューノーマル)」を経済政策の根幹に据える。第十三次五カ年計画(一六〜二〇年)では、成長目標を「年平均6・5%以上」に抑えた。昨年九月の二十カ国・地域(G20)首脳会議で習は演説し、今後も新常態を堅持する姿勢を明確にした。

 製鉄会社の統廃合が続く河北省だが、同じ省内に開発ラッシュに沸く地域がある。北京から南西に約百キロ離れた「雄安新区」だ。習が提唱した新都市開発の中心地には、〓小平(とうしょうへい)が外資を導入した深●(しんせん)、元総書記の江沢民(こうたくみん)が推進した浦東(ほとう)と同様の経済発展を見込んだインフラ建設関連など国有企業の進出が相次ぐ。オフィス不足で賃貸料は急騰。ホテルの一室を事務所に改装して使うケースが多い。

 国有企業の厳しい統廃合を横目に進む新都市開発。「一強体制」を築いた習の意向ひとつで、地域経済の「明暗」が決まっていく。

 =敬称略

 (河北省張家口市で、秦淳哉、写真も) =おわり

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報



ピックアップ
Recommended by