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【国際】

少数派ヤジド教徒、なお数千人不明 ISに拉致され、奴隷…

ISに奴隷にされたサーディヤさん(右)とハウラさん。ハウラさんは1日3時間しか電気のつかない農家に住み込み、野菜収穫の仕事に励む

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 過激派組織「イスラム国」(IS)が拉致したイラク北部クルド人少数派、ヤジド教徒の受難が続いている。ISは支配地域を失っているが、今も数千人が行方不明のままだ。「奴隷」にされた経験を持つ親子は、捕らわれた八歳と十歳の女児二人の救出を待ち望んでいる。「もう一度家族で暮らしたい」(イラク北部クルド人自治区ドホークで、奥田哲平、写真も)

 取材に応じたのは母サーディヤさん(36)と長女ハウラさん(17)。一家は二〇一四年十月、イラク北部シンジャールに侵攻してきたISに拘束された。男女別や年齢別に分けられ、ISの拠点モスル近郊の村に連行されて「ムスリム(イスラム教徒)になるか、処刑されるか」と迫られた。

 サーディヤさんは「初めに売られたのはリビア人の男。慈悲のかけらもなく、性暴力を振るわれた」。子どもを連れて逃げようとしては見つかり、殴打された。何度も自殺を試みた。数カ月単位で次々と「転売」されたIS戦闘員は計十人に上る。その途中で次女と三女が「結婚相手」として別の戦闘員に売られた。

 一六年六月の国連報告書によると、ヤジド教徒を「悪魔崇拝」とみなすISは一四年八月にシンジャールに侵攻し、六千人以上の女性や子どもを拉致。奴隷市場を組織化し、一人二百〜千五百ドルで売買した。奴隷として掃除や洗濯、性交渉の相手をさせ、少年は軍事訓練で洗脳した。三千二百人以上が行方不明とされた。

 サーディヤさんは昨年十二月、ISが「首都」と称するシリアの拠点ラッカから解放された。最後の男は、身代金として二万ドルを要求し、親類が借金をして集めた。ヤジド教徒の脱出を手助けする非政府組織(NGO)「SAIFO」のシンガリ代表は「奴隷としてのヤジド人が人身売買ビジネスの対象に変わった」と嘆く。戦況の悪化を受け、国外への脱出資金を得る目的とみられる。

 一方、ハウラさんが今年五月に解放されたのはモスル西部。イラク軍の奪還作戦が激しくなると、戦闘員の男は「捕らわれていたヤジド教徒を助けた」と民間人になりすまして難民キャンプに逃げた。男は新たな身分証を手に入れ、モスルに戻ったという。

 サーディヤさんの娘二人は数カ月前にシリアで生存が確認できたが、交渉が難航している。「私たちの人生は壊れてしまった。けれど、絶対に二人を取り戻す」とサーディヤさん。ハウラさんが言葉を継いだ。「それだけでは足りない。私を奴隷にしたやつらを、この手で殺したい」

<ヤジド教徒> ゾロアスター教(拝火教)やキリスト教などが交じった独自の宗教を信仰する。約60万人がイラク北部に居住する。クジャクの姿をした天使を崇拝し、この天使を悪魔とみるイスラム過激派が不信心者とみなし、殺害や奴隷制を正当化した。米国のオバマ前大統領が2014年8月にISからの救出を目的に空爆を実施。今年のノーベル平和賞では、ISの残虐行為を告発したナディア・ムラドさんの名前も候補に挙がった。

 

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