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【国際】

パラダイス文書、報道開始2週間 国境越えて疑惑を追う

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 タックスヘイブン(租税回避地)関連資料「パラダイス文書」の世界一斉報道開始から二十日で二週間を迎えた。秘密のはずだった権力者や富裕層の経済活動が次々に暴露され、各国で回避地問題の議論が広がる。世界の記者の協力で明らかになってきた経済のゆがみと、取材現場の実像を報告する。

 「パラダイス文書」の報道は、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に参加する共同通信など各国メディア九十六組織、記者約三百八十人が六日午前三時(日本時間)、世界一斉に開始した。タックスヘイブンを舞台にした各国政治家、英女王、芸能人らの税逃れ疑惑や隠れた経済活動を暴露。最初に直撃したのが米トランプ政権の中枢閣僚、ロス商務長官の問題だ。

 ロス氏と関係が深い海運会社と、プーチン・ロシア大統領の親族ら三人が実質所有者の会社が多額の取引をしていたことが判明し「新たなロシア疑惑」となった。ロス氏は「不適切な行為は一切ない」と述べる一方、海運会社につながる出資は解消すると表明した。

 英女王が投資したファンドの金が、極端に高金利の割賦販売で問題化した会社に流れた事実や、英F1レーサーのルイス・ハミルトンが自家用ジェット機を買った際の税を逃れた疑いも判明した。マドンナさんら芸能人の名も。ナイキやアップルの新たな税逃れテクニックが暴露された。

 日本では鳩山由紀夫元首相が香港に拠点をおく企業の名誉会長になっていることや、内藤正光元総務副大臣がファンドを購入しながら副大臣当時の資産公開に記載しなかったことも判明した。

 ICIJはパラダイス文書以前にも、昨年のパナマ文書や二〇一三年の「オフショアリークス」など、各国記者と共同して租税回避地の秘密書類を暴く数々の報道を手がけてきた。ジェラード・ライル事務局長は「社会を公正で透明にするよう求める力を生んだ」と説明している。

KDDIの香港子会社の元会長に関する取材について話し合う「香港01」のカレン・チャン記者(左)と日本の記者=10月中旬、香港で(共同)

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◆香港の舞台裏チームで取材

 不動産資料によると二億円の価値がある。香港の夜景を一望できる展望台「ビクトリアピーク」に近い五十一階建てマンションの一室が、疑惑の渦中にある元会長宅だ。架空経理に使ったペーパー法人、発覚を防ごうと社内会議で抵抗−。「パラダイス文書」で判明した不正の舞台裏を知る人物を追い、内外メディアがチーム取材を繰り広げた。

 通信大手KDDIの香港子会社による不正会計の一端を示す資料がパラダイス文書から見つかったのは八月。子会社の会議録に妙な記述があった。KDDIが示した監査体制の改善案に「変更すると株価に悪影響が出かねない」「変更するにはもっと詳細な理由が示されるべきだ」。元会長らが激しく抵抗していた。

 不正会計は発覚後、三百三十七億円に上るKDDIの特別損失につながった。子会社が公表した資料や香港での公文書も合わせて分析すると、元会長らが架空取引を隠そうとした構図が浮かんだ。

 公文書を入手したのが、共同通信とともにICIJに参加する現地メディア「香港01」のカレン・チャン記者だ。チャン記者が調べると、元会長は本業とは別の四法人の役員にも就任。住所は全て香港の同じ場所だったが活動実態はなかった。

 十月中旬、元会長への接触を試みた。インターホンに出た女性は名乗らない。日本から来た、面会を申し込みたい−。だが女性は「会長はいない」とだけ言って切った。数日間通い続けたが、もうインターホンに出ようとしない。来意を手紙に残したが、返事はない。

 一連のパラダイス文書の取材では、ともにICIJに参加する朝日新聞やNHKの記者とも協力した。英領バミューダに登記された資源会社の名誉会長に就いていた鳩山由紀夫元首相には九月末に会った。那覇市で出版記念の講演を終えた鳩山氏に声を掛けると、就任を要請されたと、戸惑った様子もなく認めた。「鳩山という名前で信頼を得たいと思ったのではないか」と言う。

 バミューダに登記された医療機器メーカーから株の提供を受けたことが明らかになった仙台市の医師や病院もパラダイス文書の内容をすぐに認めた。メーカーはドイツやインドの医師にも株を提供していた可能性が浮上。ICIJのネットワークでそれぞれの国の記者に取材を要請し、結果を共有した。 (香港・共同)

<パラダイス文書> タックスヘイブンの法人設立に関する大量の書類で、回避地への法人設立を手がける法律事務所などから流出した。登記書類や設立申込書、法律事務所と関係者のメールまで含まれる。昨年のパナマ文書同様、欧州有力紙の南ドイツ新聞が入手、ICIJを通じて各国メディアに共有された。合計で1340万通。各国の現・元首脳、政治家や企業関係者の名前が見つかった。 (共同)

 

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