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【国際】

エジプトテロ死者305人に モスク乱射 IS系犯行か

25日、エジプト北東部シナイ半島で24日に起きた爆弾・銃撃テロ現場のモスク前に散乱する逃げ惑った人々らの靴=ロイター・共同

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 【カイロ=奥田哲平】エジプト北東部シナイ半島のモスク(イスラム教礼拝所)で起きた襲撃事件で、検察当局は二十五日、死者が子ども二十七人を含む三百五人、重軽傷者が百二十八人に拡大したと発表した。武装集団が過激派組織「イスラム国」(IS)の黒い旗を掲げてモスクに現れたとされ、シナイ半島を拠点にするIS系列組織の犯行の可能性が高まった。

 エジプト国内では近年で最悪の惨事になる。ISはこれまでのところ犯行声明を出していない。検察当局の声明では、二十五〜三十人の武装集団が二十四日、五台の四輪駆動車でモスクに乗り付け、金曜礼拝で指導者が説法を始めた直後、乱射を始めた。

 臀部(でんぶ)を撃たれて入院中の男性(48)は本紙の電話取材に、武装集団の一員が襲撃後に「ムジャヒディン(聖戦士)を侮辱した罰だ」と話して立ち去ったと明らかにした。

 隣にいた息子(21)は死亡し、「信じられない量の血が流れた。息子の身代わりになりたい」と泣きじゃくった。また、親類・知人ら百二十人を亡くした男性(28)によると、武装集団はモスクでの犯行後に周辺を歩き回り、男性を見つけると殺害したという。「犠牲者はまだ増えるだろう。これは集団虐殺だ」と語った。

 モスクがある村の有力部族は過激派の掃討作戦を続ける治安当局に協力しており、IS側の報復との見方が強まっている。一週間ほど前にIS戦闘員をかくまうように要請を受けたが、村側が断っていたとの情報もある。シナイ半島の部族連合は二十四日、「われわれの土地から全ての過激派を排除するまで眠らない」との声明を出した。

 エジプト軍は二十五日、現場周辺の山岳地帯を空爆し、武装集団とみられる車両などを破壊したと発表。国内ではイスラム教徒を標的にした犯行に衝撃が広がっている。

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◆イスラム教徒標的、異例

 【カイロ=奥田哲平】モスクで礼拝していた一般市民が襲われたエジプトの襲撃テロ。関与が疑われる過激派組織「イスラム国」(IS)の系列組織「ISシナイ州」には、支配地域を失ったイラクとシリアから脱出した戦闘員が流入したとの指摘もある。

 ISシナイ州は二〇一一年から活動する地元過激派組織が母体で、一四年にISに忠誠を誓い、キリスト教一派のコプト教徒や治安部隊を標的にしたテロ事件を繰り返してきた。テロとの戦いを最重要課題に掲げるシシ政権は軍事作戦を強化し、最近はIS側の劣勢が伝えられていた。

 転機となったのが、元来は反政府的な立場の地元部族との連携だった。山岳地帯が多いシナイ半島の地理を案内し、過激派の潜伏情報を伝えた。今回の襲撃が起きたのは、半島で二番目に大きい部族「サワルカ」が多く住む地域。今年五月に治安当局に協力する声明を発表した。

 一方、ISは今年七月にイラク北部の最大拠点モスルを失い、「首都」と称したシリア北部ラッカが十月に陥落。今月に入って、イラク・シリア国境地帯の掃討作戦も進み、組織壊滅が決定的になった。その一方で、戦闘員が出身国に帰還したり、各地に分散する懸念も高まる。

 エジプトでイスラム教徒が狙われるのは異例だが、襲撃されたのはイスラム教のスーフィズム(神秘主義)の信者が集まるモスクで、ISは背教者として異端視する。イラクやアフガニスタンでは、ISが対立するシーア派モスクや聖廟(せいびょう)を狙ったテロも発生。ISの犯行ならば、イラクなどから逃れた戦闘員がシナイ半島で合流、襲撃の手口を持ち込んだ可能性がある。

 それは同時に、対ISの最前線がシナイ半島に移ることを意味する。経済危機が続くエジプトにとって、観光は収入源だが、テロの影響で外国人の足は遠のいたままだ。事実上の軍事クーデターを経て一四年に就任したシシ大統領がテロ封じ込めに失敗すれば、求心力の低下は避けられない。

<スーフィズム> イスラム教の神秘主義。一心不乱に祈祷(きとう)句や神の名を読み上げるなどのさまざまな禁欲的修業により、神との精神的合一という神秘体験を目指す民衆的な信仰形態で、宗派ではない。7世紀初めに創始されたイスラム教が拡大する中、8世紀ごろに始まり、9〜10世紀に流行した。今もイスラム世界各地に教団がある。イスラム教の普及に貢献したが、各地で土着の民間信仰と結び付くことがあり、戒律を重視するイスラム主義勢力から敵視されているとされる。 (共同)

 

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