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【国際】

唯一の被爆国 特別な役割ある 核禁止条約、日本参加を

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◆交渉主導オーストリア軍縮大使

 国連で今年7月に採択された核兵器禁止条約の交渉を主導したオーストリアのトーマス・ハイノツィ軍縮大使(62)が本紙のインタビューに応じた。米国から「核の傘」の提供を受ける日本が条約に参加していないことについて「日本には世界で唯一の被爆国として特別な役割がある。参加するなら素晴らしい」と述べ、将来の参加に期待を示した。 (ジュネーブで、垣見洋樹、写真も)

 核兵器の開発・使用を違法とする核兵器禁止条約は百二十二カ国・地域の賛成を得て採択された。

 ハイノツィ氏はオーストリアが条約交渉を主導したことについて「東西冷戦期、旧ソ連が(西側の)オーストリア、米国が(東側の)隣国ハンガリーをそれぞれ核攻撃する計画が発覚した後、核廃絶の意識が高まった」と説明。禁止条約が多くの支持を得た理由は「保有国が核兵器を最新化する開発競争を繰り広げる中、歯止めをかけなければとの危機感が世界的に広がった」と語った。

 自ら広島を訪問し、被爆者と対話した経験を明かし「被爆者は核兵器が人間にどんな影響を及ぼすか証明している」と強調した。

 条約が発効するには五十カ国以上が国内手続きを終える必要があり、「発効には二年から二年半かかる」との見通しも示した。

 核保有国の米国や中国、米国の核抑止力に頼る日本やドイツ、核開発を進める北朝鮮などは禁止条約の交渉に参加しなかった。

 日本主導の核兵器廃絶決議が十月に国連で採択されたが、禁止条約に触れず、核兵器の非人道性についての表現は後退。ハイノツィ氏は当時「核軍縮を後回しにする書きぶりだ」と、抑止力を前提とした決議案を批判し、採決を棄権した。

 核保有国が禁止条約を非現実的と主張していることについて、ハイノツィ氏は「化学兵器を禁止する前も現実的でないと言われたが最終的に実現した」と反論。「現在の日本政府は参加しないと言っているが、永遠にそうとは限らない。最終的には国民が決めることだ」と述べ、日本の参加に重ねて期待を示した。

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◆「核には核」への強い疑念

<解説> 東西冷戦時代、米国と旧ソ連による核戦争の恐怖と危機に接した経験が、オーストリアを核兵器禁止条約の制定に突き動かした−。核廃絶を追求するハイノツィ軍縮大使の発言には「核には核で立ち向かう」という核抑止力に対する強い疑念がにじむ。

 北朝鮮の核開発が深刻化する中、米国は核抑止力の必要性を訴え、禁止条約を「非生産的なだけでなく、核不拡散や核軍縮の弊害になり得る」(ウッド米軍縮大使)と言い切った。米国の「核の傘」に頼る日本も条約に賛成はできない。

 しかし、ハイノツィ氏は北朝鮮が核兵器開発を放棄しない現実こそ「核保有大国の抑止力が機能していない証拠」と指摘する。

 広島の被爆者と対話を重ね、禁止条約の前文に「ヒバクシャ」という言葉を盛り込むことにも力を尽くした。取材では、条約を「非現実的」と批判する米国と足並みをそろえる日本へのあからさまな批判は避けたが、唯一の戦争被爆国に対する期待は大きい。

 条約に賛成したのは国連加盟百九十三カ国の六割を超える百二十二カ国と地域。日本は核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任するが、消極的な姿勢を続ければ、国際的な信頼を失いかねない。

  (垣見洋樹)

◆核兵器禁止条約発効へ ICAN平和賞が後押し

 国連で七月に採択された核兵器禁止条約の交渉を主導したオーストリアのトーマス・ハイノツィ軍縮大使は本紙の取材に、日本の条約参加に期待を示した。一問一答は次の通り。 

 −なぜオーストリアは条約交渉を主導したのか。

 「東西冷戦期に旧ソ連はイタリア−旧西ドイツ間の交通を遮断するため、オーストリアに核兵器を撃ち込むことを計画した。米国は隣接するハンガリーへの核兵器使用を検討。こうした事実が明らかになり、国民の間に早くから核廃絶の機運が高まった」

 −条約が広く賛同を得た理由は。

 「二〇一四年、ウィーンに百六十カ国を集め『核兵器の非人道性に関する国際会議』を開いた。科学者らが最新の知見から、核戦争によって『核の冬』と呼ばれる地球の気温低下現象が起こり、人類の生存を脅かすほどの甚大な環境破壊をもたらすと報告し、危機意識が強くなった」

 「核保有国が核兵器を最新化するなど開発競争をする中、歯止めをかけなければという危機感が世界的に広がった」

 −条約成立に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))」のノーベル平和賞受賞が決まった。

 「条約が国際的に認められたと理解している。(発効に向け)後押しになる」

 −日本の被爆地を訪れたことは。

 「広島で多くの被爆者と話をした。彼らは核兵器が人間にどんな影響を及ぼすかを証明している」

 −日本は条約に参加していない。

 「現政府は参加しないと言っているが、永遠にそうとは限らない。最終的には国民が決めることだ。唯一の被爆国として、特別な立場、特別な役割がある。日本が条約に参加するなら素晴らしいことだ」

 −条約発効の見通しは。

 「五十カ国以上が批准するには時間がかかる。採択から二年から二年半は必要だろう」

 −核保有国は条約を現実的でないと批判している。

 「化学兵器を全面禁止する前も非現実的だと言われたが、最終的に実現した」

 −日本は、北朝鮮の核の脅威に対する抑止力の必要性を訴えている。

 「(米国などの)核保有国が、北朝鮮の核開発を止められなかったのは、核兵器が役に立っていない実例ではないかと思う」

<トーマス・ハイノツィ> 1955年、ウィーン生まれ。ウィーン大学で法律と経済を学び、78年にオーストリア外務省に入省した。軍縮や安全保障に関する部門で勤務した後、国連のオーストリア次席代表、欧州評議会の常駐代表などを経て国連の軍縮大使。

 

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