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【国際】

進む入植 退去におびえ 「首都認定」エルサレム・ルポ

10日、東エルサレムのシルワン地区で、20日ほど前に強制退去させられた隣家の跡地を見せるゼイトンさん

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 米国がエルサレムをイスラエルの「首都」と認定した問題を巡り、抗議活動は収束の気配を見せない。トランプ米大統領の「現実を認めるにすぎない」との言葉は、イスラエルによる占領政策の追認を意味するからだ。一九六七年の第三次中東戦争で併合された東エルサレムのシルワン地区では着々とユダヤ人の入植が進み、パレスチナ人が退去を迫られている。 (エルサレム・奥田哲平、写真も)

 旧市街城壁内にあるイスラム教の「アルアクサ・モスク」南東側に広がる傾斜地に住宅が密集するシルワン地区。古代イスラエルのダビデ王が紀元前に街を築いたとされ、ユダヤ教徒は聖地とみなす。急進的なユダヤ人が一九九〇年代から入植を始め、玄関や窓に国旗を掲げた家が建つ。パレスチナ住民と入植者、イスラエル治安当局とのあつれきは絶えない。

 トランプ氏の「首都認定」に対する抗議デモが世界各地で続いた十日午前、シルワン地区でも共同墓地に入植者が無断で入り、樹木を伐採しようとして地元住民と小競り合いが起きた。「なぜ生まれ育った土地を奪われなければいけないのか」。雑貨店を営むパレスチナ人のハリド・ゼイトンさん(53)が憤る。

 ゼイトンさん宅を含め地区の民家の多くは「無許可建築」とされ、立ち退き命令を受ける。そもそもパレスチナ人が建築許可を得るのは難しく、イスラエルの法に照らせば「違法」となる。二十日ほど前には隣家が強制的に退去させられ、取り壊された。ゼイトンさんは「次は私の家かもしれない」とおびえる。

 エルサレム市は二〇一〇年、ダビデ王ゆかりの史跡公園を造る計画を承認。強制退去を加速させた。反対する住民が治安当局に投石で抵抗し、ゼイトンさんの子どもも五人のうち三人が逮捕された。九歳の孫さえも投石を理由に一夜を警察署で過ごした。逮捕歴があれば就職は難しくなり、貧困から抜け出せない。

 「これ以上は問題を抱えたくない」と、最近の抗議デモには参加していないゼイトンさん。米国の「首都認定」に怒りはあっても、圧倒的な力の差が立ちはだかる。「イスラエルは立ち退きをエスカレートさせるだろう。では、誰が止めてくれるのか。神しかいないのかもしれない」。ゼイトンさんはため息をついた。

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