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【国際】

金井さん 医師から転身、補欠でも腐らず

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 金井宣茂さんは、海上自衛隊の医師から転身し、宇宙飛行の夢を実現させた。飛行士選抜の試験結果は当初補欠だったが、諦めずに体力づくりや語学の勉強を続け、追加合格の知らせを受けた。当時を知る仲間は「腐らず自分を磨いていた」と口をそろえる。武道で培った強い意志が原動力だ。

 金井さんは東京都で生まれ、千葉県で育った。高校三年間は弓道に熱中し、「どんな状況でも心を整えて自分と周りを冷静に見ることを学んだ」という。海外で活動する医師に憧れ、防衛医科大を経て、自衛隊の医師の道に進んだ。

 仕事の傍ら、のめり込んだのが居合道。自衛隊大湊病院(青森県むつ市)に勤めていた際に指導した海上自衛官の五戸(ごのへ)敏明さん(63)は「素直で覚えが早かった。できなかったことも次の稽古には完璧にできるようにしていた」と振り返る。

 五戸さんが同県八戸市に転勤した後も、金井さんは必ず週一回、車で片道一時間半かけて稽古に訪れた。五戸さんの目に金井さんは「いったん始めたら最後まで諦めない根性がある」と映った。

 転機は二〇〇八年。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が十年ぶりに飛行士を募集した。米海軍の学校で潜水医学を学んだ時、同じ専門の医師が飛行士になったことを知り、宇宙に関心を抱いていた。憧れと医師のやりがいが交錯したが、「一歩を踏み出すことが大事」という五戸さんの言葉に背中を押された。

 だが約九百六十人が応募し、〇九年二月の結果発表では合格したのは二人だけで、金井さんは補欠だった。当時勤めていた自衛隊呉病院(広島県呉市)の同僚で歯科技工士の鈴木尚(たかし)さん(46)によると、それでも落ち込んだ様子はなく、愚痴一つ言わなかった。「いつ追加で呼ばれてもいいように」と、休み時間や仕事後はランニングや、語学の勉強を黙々と続けた。

 朗報が届いたのは半年後。金井さん、鈴木さんと毎週のように焼き肉店に足を運ぶ仲間だった防衛事務官の岡村康子さん(34)は、祝福のメールを急ぎ送った。だが返事は「ありがとうございます」とあっさり。「本当に合格したのか疑いたくなるほど冷静だった。この落ち着きが宇宙でも役立つはず」と期待する。

 飛行士選抜を担当したJAXAの阿部貴宏グループ長も「選抜は間違っていなかった。まだまだ伸びしろを感じる」と評価している。

 モットーはなく、縁起も担がない。「何があっても最後は自分で対処するしかない。武道精神で乗り切る」。よどみなく語る目の奥に、強い意志をみなぎらせる。 (バイコヌール・共同)

 

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