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【国際】

<終わりなき闘い ポストISの世界> (2)行き場失うシリア難民

ベイルート南郊のハダス市で11月下旬、鉄工所で働くシリア難民

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 溶接作業の火の粉を浴びながら、四人のシリア難民が黙々と働いている。レバノンの首都ベイルート南郊にあるハダス市の鉄工所。手を止めたユセフさん(37)が焦燥感を漂わせた。

 「せっかく見つけた仕事。追放されたくない」

 ハダス市は十月、全国に先駆けて違法労働や居住許可を持たないシリア難民に立ち退き命令書を出し始めた。命令書に従わなければ拘束される恐れがある。シリア北部ハサカから妻と子ども三人で避難するユセフさん宅には十一月、地元の警察官が訪ねてきた。名前を聞き取っただけで帰ったが、この先は分からない。

 人口四百六十万の小国レバノン。二〇一一年に始まった内戦でシリアを追われた人たちが隣国に押し寄せた。公式の人数は百万人だが、実際には国連に未登録の五十万が加わる。「レバノン自体が巨大な難民キャンプになってしまった」(ハリリ首相)と懸念する声が高まる。難民への生活支援が経済を圧迫。レバノン人より安価な給与で長時間労働もいとわないため、住民との間で摩擦を生む。

 ハダス市のジョージ・アウン市長は「受け入れは限界だ。戦闘はほぼ終わったのに、なぜ戻らないのか。もう難民とは呼べない」と露骨だ。人口十万人の市に暮らす難民はピーク時に約四千人。小学校は一日二部制になり、インフラ整備は停滞した。市長は、戦渦で追われた難民から「経済移民」へと滞在目的が変わったと主張する。「国際社会は、難民の帰国促進に支援を切り替えるべきだ」

 難民への風向きが変わったのは、レバノン東部の山岳部に「イスラム国」(IS)などの過激派組織の浸透が発覚したのも一つの理由だ。地元紙記者は「難民に裏切られた思いがして支援団体への批判が高まり、寄付が減った」と指摘する。結果としてテント生活の郊外型キャンプから都市部への流入が増加し、難民の姿が見えづらくなった。

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 シリア内戦はレバノンなどの周辺国や欧州に五百万人、国内に六百三十万人という避難民を生み出した。ロシアのプーチン大統領は今月十一日、ISへの「勝利」を宣言したものの、北西部イドリブ県は国際テロ組織アルカイダ系が支配し、クルド人勢力も北部に支配地域を広げた。和平協議は難航したままだ。

 ユセフさんの同僚アフマドさん(35)は、昨年十二月に政権軍が反体制派を駆逐して掌握した激戦地アレッポ出身。「子どもの夢はシリアに戻ること。でも、帰国したら、将来は政権軍に徴兵される」と思い悩む。排斥感情の高まりと終結のめどが立たない内戦への恐怖の狭間(はざま)で、難民は行き場をなくそうとしている。 (レバノン中部ハダスで、奥田哲平、写真も)

 

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