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【国際】

<終わりなき闘い ポストISの世界> (3)潜む兵士おびえる英国

英国から過激派組織ISに参加したサリー・ジョーンズ容疑者の殺害を伝える英紙

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 過激派組織「イスラム国」(IS)が首都と主張したシリア・ラッカが十月十七日に陥落する数日前、複数の英紙一面に、拳銃を構える白人女性の写真が載った。サリー・ジョーンズ容疑者=当時(48)。テロリストとして「最重要指名手配」に指定され、今年六月、ラッカから逃走中に米軍の小型無人機「ドローン」の攻撃で殺害された。

 英メディアによると、東部ケント州出身の元パンク歌手。シングルマザーで生活保護を受け、二〇一三年、ネットで知り合った男とシリアに渡りISに参加。自らも数十人の欧州女性を勧誘したという。

 当時の英国防相は「自国民であろうと、IS兵士は容赦なく爆死させる」と宣言していた。

 IS崩壊により、外国人の元兵士は英国の身近な脅威に変わった。欧州連合(EU)欧州委員会のジュリアン・キング委員(治安同盟担当)は「欧州から八千人がイラク、シリアでISに参加した。一部は死に、一部は彼らの聖戦をよそに求めるだろうが、一定数は欧州に帰る。覚悟し対処する必要がある」と警告した。

 オランダ・ハーグのテロ対策国際センターによると、欧州からの元IS兵士のうち、七割はベルギー、フランス、ドイツ、英国の四カ国出身。英国は約八百五十人のうち半数が帰国を図るとみられている。

 シリアの密航業者は「IS兵士は長い髪を切り、ヒゲをそってジーンズにTシャツ姿で市民を装う。トルコ国境で業者に引き渡す。トルコでは偽のパスポートも用意できる」と明かす。スーダンを経由し、陸路でエジプトやリビアに渡る場合もあるという。

 英国では、元IS兵士は身柄を拘束され、殺人やテロ行為などあらゆる刑法の訴追対象となる。

 ウェスト・ロンドン大のジュリア・ラシュチェンコ教授は「英国には、軍事や爆発物の十分な訓練を受けた元兵士が四百人近くも戻る。彼らは将来、英国や他の欧州諸国に深刻な脅威をもたらす。訴追対象にならない場合も、捜査機関の監視対象にはなるべきだ」と強調する。

 一方、帰国した元IS兵士を支援するバーミンガム・シティー大のイムラン・アワン教授は「英国は彼らのパスポートを取り上げ、市民権を剥奪している。このような強硬手段は彼らを孤立させるだけだ。元兵士を社会に戻し更生させることこそ、人々が期待する結果ではないか」と話す。

 ISのプロパガンダは、英国の低所得層、低学歴者、移民に言葉巧みに近づき、伝統的に寛容な社会に潜む差別、偏見からの解放を説いたとされる。

 保守系の英紙テレグラフは、移民が多く住む地域を名指しして「英国の多様性がISのテロをのさばらせた」と批判した。

 ISの崩壊は、英国に寛容であり続けるかどうか、問いを突き付けている。(ロンドン・沢田千秋、写真も)

 

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