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【国際】

<終わりなき闘い ポストISの世界> (4)過激化阻止へネット発信

21日、エジプトのカイロで、イスラム過激派サイトを監視するムハンマド氏

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 エジプトの首都カイロで、研究者たちがパソコンの画面を見つめている。ツイッターやフェイスブックなどの会員制交流サイト(SNS)、動画投稿サイト…。目を光らせるのはイスラム過激派の動向だ。

 過激派組織「イスラム国」(IS)が伸長した二〇一五年、イスラム教スンニ派の最高権威アズハルが設立した監視分析部門。テロ計画の恐れがある情報を治安当局や当該国に提供するほか、テロ事件を起こした過激派がイスラム教の教義を曲解して発するメッセージに対し、宗教指導者たちが見解を発表する。

 例えば一五年二月にISがヨルダン軍パイロットを焼殺した際、ISはイスラム法学者の見解を引用して正当化した。アズハルは「神以外に罰することはできない」と反論。外国人戦闘員が多いISに対抗し、公式ツイッターは十カ国語で発信する。

 「若者一人が過激派に加入すれば百人を殺す。一人の加入を防げれば、百人の命を救うことになる」。ハッサン・ムハンマド副代表(33)が語る。

 イラク、シリアの広範囲を支配したISのもとには、四万人の外国人が集まった。インターネットを駆使して戦闘員を勧誘。背後には数え切れない信奉者も存在する。過激なメッセージは経済的な苦境や政治体制に不満を持ち、社会から疎外感を抱く若いイスラム教徒を引きつけた。

 ムハンマド氏によると、掃討作戦が進むにつれ、ISの広報能力も劇的に衰退。いたちごっこだったツイッターは閉鎖後に新たなアカウントが出現しなくなり、視聴者を扇動した残虐な映像は、過去の映像の焼き直しが増えた。しかし、一度拡散した過激思想はネット上に漂い続ける。

 米ニューヨーク中心部で十、十二月と続いたテロ事件は、いずれも容疑者が単独犯で、ネット上でISに触れて過激化したことが明らかになった。

 組織的なテロの芽を計画段階で摘む従来の捜査手法は通用しない。思想検閲の強化が基本的人権を侵害する恐れもある。クウェートの宗教研究所でイスラム思想が専門のアムル・バシオーニ氏(32)は「ISの過激主義を批判するだけでは、信奉者の考えは変えられない」とみる。

 バシオーニ氏は一二年から質問型SNSを使って若者の宗教的疑問に直接答える試みを進める。「無知な若者が過激思想に染まりやすい。正しい教えを説明する地道な活動が必要だ」。軍事的なIS壊滅の先に、新たな「戦場」がすでに現れている。(カイロ・奥田哲平、写真も)

 

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