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【国際】

<トランプ的世界>(2)中東 もはや調停者ではない 「首都」認定で対立激化

昨年5月22日、エルサレムで握手を交わすトランプ米大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相=ロイター・共同

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 パレスチナ人の若者が投げるこぶし大の石が空から降り注ぎ、重武装のイスラエル軍が放った警笛弾が爆音を響かせる。世界遺産のエルサレム旧市街に近い商店街。被害を防ごうと鉄扉を閉めかけた洋服店の店主が記者に言った。「イスラエルはデモさえ許さない。これがトランプ米大統領が認めた首都の現状だ」

 昨年十二月、米国は、ユダヤ教徒のみならずイスラム教徒やキリスト教徒の聖地でもあるエルサレムを、「ユダヤ人国家」イスラエルの首都と認定した。パレスチナ自治政府が将来の独立国家の首都と位置付ける東エルサレムを半世紀にわたって占領するイスラエルは、その東エルサレムを合わせて「不可分の永遠の首都」と主張。トランプ氏の宣言は、パレスチナ人の心情を逆なでした。治安部隊とデモ隊の衝突や空爆で、計十三人が死亡した。

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 イブラヒム・アブスライヤさん(29)は、パレスチナ自治区ガザのイスラエルとの境界で銃撃を受け亡くなった。九年前にイスラエル軍の攻撃で両足を失い、車いすに乗った「抵抗の象徴」だった。母アデドルさん(55)は「息子の死はトランプの責任だ」と憤る。

◆敵味方を峻別

 首都の帰属は和平交渉で決定する−とした国際合意に反する宣言に踏み切ったトランプ氏。一連の中東政策を貫くのは、オバマ前米大統領の否定と、敵味方を峻別(しゅんべつ)する姿勢だ。オバマ政権はイスラエルにユダヤ人入植地の建設抑制を求め、イランとの間で、核開発の制限と引き換えに対イラン経済制裁を解除する核合意を結んだ。トランプ氏はイランへの敵意をあらわにして核合意の破棄を訴え、イスラエルやサウジアラビアに露骨に肩入れした。

 カイロ・アメリカン大のサイド・サデク教授(政治学)は「イスラエルとサウジを結び付けてイラン包囲網を築くのが、米国の狙いだ。その前に(双方の立場が対立する)パレスチナ問題にけりをつけなければならず、米国は最も微妙なエルサレム問題を持ち出し、パレスチナに不利な譲歩を迫っている」と指摘。トランプ氏の言う「究極の取引」の正体とみる。

 イスラエルのネタニヤフ首相も「パレスチナ側が速やかに現実を理解すれば、和平の動きも速まる」と発言。このままパレスチナを押し切ろうとする。

◆米離れ加速も

 しかし、米国などの狙いが奏功しているとは言い難い。パレスチナ自治政府のアッバス議長は「米国はもはや調停者ではない」と非難し、和平交渉再開は遠のいた。トランプ氏との親密な関係を後ろ盾にするサウジのムハンマド皇太子は泥沼化したイエメン内戦から抜け出せず、国交を断絶したカタールはかえってイランへ接近した。

 国連総会で先月二十一日に米国の決定の無効を求める決議が採択されたのを受け、イスラエルの有力紙ハーレツは翌日「対イランのいかなる提案も、米国が出したという理由だけで反対に遭う可能性がある。それはイスラエルにとって危険だ」とする論評を載せた。トランプ氏が中東の安定を揺るがす事態が続けば、同盟国からも「米国離れ」の動きが加速しかねない。 (カイロ・奥田哲平)

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