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【国際】

<揺れる超大国 トランプ米政権1年> (下)進む排外主義

米ニューヨークで子どもたちにサッカーを教えるガルシアさん

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 そろいのジャージー姿で七〜八歳の男の子十四人がサッカーボールを追う。一月上旬の夜、米東部ニューヨークの体育館。コーチのジョスマン・ガルシアさん(19)が一人一人の顔を見渡しながら褒めた。「始めたころより、ずっと上手になっているのが分かる?」

 愛するサッカーに出合えた「お返し」にと、学業のかたわら二年前から地元で教えてきた。難関で知られるニューヨーク市立大バルーク校の二年生。将来の夢は株式ディーラー。しかしトランプ米政権の下、就労どころか、米国に居つづけられるかすら分からない。

 昨年九月の朝。大学での講義中、ニュース速報でセッションズ司法長官の発表を知った。「DACA(ダカ)を撤廃する」。子どもの時に親に連れられて不法入国した若者の強制退去を免除する制度。オバマ前政権が導入し、八十万人が対象といわれる。ガルシアさんも、その一人。不安で涙をこらえきれなかった。

 他人の旅券でメキシコから国境を越えた、と両親に聞いた。当時一歳。記憶はない。現政権は「米国民の仕事を奪い、不法移民に与えている」とDACA撤廃の理由を挙げる。だが、移住の経緯以外、後ろ指をさされるいわれは全くない。

 酒やドラッグに手を出す仲間とは付き合わず、まじめに勉学に励んできた。事件に巻き込まれればDACAを取り消されかねない。DACA撤廃への抗議運動すら「当局から目を付けられたくない」と参加を思いとどまる。「明日も分からぬ身。家族もそう。その恐怖や心配がどれほどか…」

 米国での生活がおびやかされる若者がいれば、入国できずに命を失う人も。

イエメンから米国への渡航が認められなかった次男を失ったガレブさん

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 モハメド・ガレブさん(73)は十年前、米国の娘を頼って移民査証(ビザ)を取得し、中東イエメンから移り住んだ。トランプ氏が治安対策を理由に入国禁止令を出したイスラム諸国の一つだ。

 内戦が続く母国の治安当局でテロ対策を担当していた次男カルドゥンさん=当時(35)=が昨年十一月、テロ組織に殺された。ガレブさんと暮らすため米国の移民ビザを申請していたが、入国禁止令を受けて「もう会えないかも」と電話した一週間後のことだ。

 移民問題が専門のメリッサ・カツォーリス弁護士(28)は、特定の宗教や国を十把ひとからげにする移民規制を「憲法上の大問題」とみる。実際、DACA撤廃や入国禁止令は国籍や宗教の差別に当たるとして、連邦地裁・高裁で執行の差し止めを命じる決定が相次いでいるが、連邦最高裁は憲法判断を避けたまま入国禁止令の全面執行を暫定的に容認。司法も揺れている。

 「米国を再び偉大に」と繰り返し、排外主義を強めるトランプ氏。ガレブさんの目には、根拠なくテロリスト呼ばわりしているように映る。「米国を偉大でなくしているのは、彼自身だ」 (赤川肇、写真も)

 

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