東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 国際 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【国際】

「志願兵戦死者と認めて」 ウクライナ危機4年 ロシア社会関心低下

モスクワ市郊外で、夫マクシムさんと最後に撮った写真を見せるユリアさん=栗田晃撮影

写真

 【モスクワ=栗田晃】ウクライナの政変から二月で四年を迎え、ウクライナ東部の一部地域を実効支配する親ロシア派勢力と政府軍の紛争はいまだに続く。プーチン大統領がロシア軍の派遣を否定する中、「志願兵」として死んだロシア人遺族は国の補償を受けられず、苦しい生活を送る。しかし、ウクライナ問題への関心は低下し、三月の大統領選の争点にもならない。

 「友達を助けに行く」。ユリア・クラフチェンコさん(38)は夫の言葉を思い出す。トラック運転手のマクシムさん=当時(37)=は二〇一四年三月、ロシア南部の自宅を離れ、ウクライナ東部に向かった。

 ロシア国内では愛国心をあおる報道が相次ぎ、志願兵に加わる人も多かった。ウクライナ東部に住んでいた友人一家の移住を支援していたはずのマクシムさんも親ロ派部隊の一員となり、前線へ。当時、十歳と一歳の娘二人と待つユリアさんは、何度も戻ってくるよう頼んだ。だが、答えは「もうすぐ戦争は終わる。そうすれば戻るから」だった。

 四カ月後、電話が途絶え、間もなく戦死の連絡が届いた。現地で確認した夫の親族が送ってくれた写真で、最期の姿と対面した。

 残されたユリアさんは仕事を求め、モスクワ郊外に移住した。スーパーで働くが、アパートの家賃や教育費で生活は苦しい。

 「ウクライナ東部にロシア軍はいない」。プーチン氏は一貫して否定してきた。国が認定した戦死者には遺族一人あたり月一万ルーブル(約二万円)の手当が支給されるが、ユリアさんは対象外だ。「大統領には夫も戦死者として認めてほしい」とため息をつく。

 戦死遺族らの支援にあたる非政府組織(NGO)「兵士の母の委員会連合」のバレンティナ・メリニコワ書記長は、ウクライナ東部でロシア人千五百人以上が戦死したと推定。「戦死しても、捕虜になっても、傭兵(ようへい)か戦争犯罪者の扱いだ」と指摘する。

 一方、反政権派の支援も期待できない。リベラル系野党「ヤブロコ」の大統領選候補、ヤブリンスキー氏は志願兵に「政権に加担し、ウクライナ人を殺した犯罪者だ」と手厳しい。

 世間の関心も薄れている。独立系世論調査機関レバダ・センターの昨年九月の世論調査では、「ウクライナ情勢に関する報道に注目している」と回答した人は約三割で、一四年八月の調査から半減した。

 「お父さんは、英雄として死んだんだよ」。ユリアさんは子どもにそう伝えている。しかし、心の中では夫に何度も訴える。「あなたの死に意味はあったのか。もっと子どもたちのことを考えてほしかった」

 <ウクライナ紛争> 2014年2月、ウクライナの首都キエフで、親ロシアのヤヌコビッチ政権に反発するデモが激化し、政権が崩壊。ロシアによるクリミア半島併合に続き、ウクライナ東部のルガンスク州やドネツク州などでは親ロ派武装勢力が実効支配を始め、分離・独立を主張して政府軍との紛争に発展した。ドイツなどの仲介で15年2月に停戦合意が結ばれたが、散発的な戦闘は継続。今までに1万人以上の犠牲者が出ている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報