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【国際】

鉄鋼関税 貿易戦争の恐れ  「米国第一」新たな火種

 トランプ米大統領は八日、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を二十三日に発動することを正式決定し、報復措置の応酬を招く貿易戦争の懸念が強まった。「米国第一」の強硬策は世界の通商秩序を揺さぶり、同日に日本が米国を除く環太平洋連携協定(TPP)の参加国と署名した新協定も、かすんだ形だ。朝鮮半島情勢を巡って日米中三カ国の協調が重要となる中、貿易問題が火種となる懸念がある。

 「関税を払いたくなければ工場を米国に持ってくればいい」。トランプ氏は八日、輸入制限を命じる文書への署名式で語った。

 「貿易赤字は負け」と考えるトランプ氏は、外国に米国人の雇用が奪われたとして貿易赤字の削減に執念を燃やす。「今は秋の中間選挙に向け、どこで点数を稼ぐかが最大の関心事」(市場関係者)。支持基盤の労働者層にアピールするため、保護主義的な動きを強める。

 輸入制限は、鉄鋼やアルミを多く生産し、安い価格で輸出している中国が主な標的とみられ、鉄とアルミの輸入にそれぞれ25%と10%の関税を課す。

 各国からは反発の声が相次ぐ。中国商務省は九日、「断固として反対。有効な措置を取る」と表明。欧州連合(EU)のマルムストローム欧州委員(通商担当)もツイッターで「EUは同盟国であり、当該措置から除外されるべきだ」と主張。米ハーレーダビッドソンの二輪車などを対象に報復措置もちらつかせる。

 「台頭する保護主義にTPP11が風穴を開けた」。新協定の署名に先立ってチリで開かれた閣僚会合。複数国の閣僚が語った。新協定は各国にとって「米国に対する防波堤」(交渉関係者)だ。署名式に参加した茂木敏充経済再生相は「日本が率先して動くことで、早期発効に向けた機運を高めていきたい」と述べ、参加国の結束を強めていく意欲を示した。

 こうした動きに米ピーターソン国際経済研究所シニアフェローのメリー・ラブリー氏は「米国が自由貿易体制に背を向けつつある現状では、日本などの国々が自由貿易で深い結び付きを追求することの重要性が増している」と期待する。

 ただ、日本の経済官庁幹部は「日米は安全保障で一心同体。頭ごなしの反論はしにくい」ともらす。米国の輸入制限に対して日本はEUや中国のような対抗手段は取らない考えだ。

 経済産業省OBの細川昌彦中部大特任教授は「大国が制裁を応酬するパワーゲームとなれば、日本は一九八〇年代の悪夢の再来だ」と指摘する。日本を長く苦しめた米国との貿易摩擦は九五年に世界貿易機関(WTO)が発足し、紛争処理のルールが整ったことで歯止めがかかった。細川氏は「米国の輸入制限はWTOルール違反。市場が混乱すれば日本への影響は大きい」と懸念する。 (矢野修平、ワシントン・白石亘)

 

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