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【国際】

シリア住民、癒えぬ傷 80人死亡 サリン攻撃あす1年

シリア北西部イドリブ県で、化学兵器サリン使用の爆撃があったとされる場所。現在は穴が埋められている=いずれもアブドルハミド・ユセフさん提供

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 【カイロ=奥田哲平】シリア北西部イドリブ県で昨年四月に化学兵器のサリンが使用され、住民八十人以上が死亡してから四日で一年を迎える。現場の町ハンシャイフンでは、今も残る住民が惨劇の記憶とサリンの後遺症にさいなまれている。

 生後九カ月の双子と妻を含む親族二十五人を失ったアブドルハミド・ユセフさん(29)は本紙の電話取材に「家族の姿が頭から離れない」と嘆く。昨年四月四日早朝の爆撃は自宅近くに落ちた。口から泡を吹き、体をけいれんさせる人たち。救助活動中に意識を失い、妻と双子が巻き添えになったと病室で聞かされた。「私は生存者と言われる。でも、死んだも同然だ」

 猛毒の神経ガス、サリンは人間の神経に影響し、目の異常や呼吸困難を引き起こす。地元医師によると、「目がかすんで見えにくくなった」と目の不調を訴える住民が多い。しかし、ハンシャイフンには眼科医がいないため、別の地域まで通わざるを得ないという。

 爆撃地点から二百メートルの自宅に住むリーナさん(38)は「サリンの影響かは分からないが、関節の痛みが残り、体が疲れやすい」と話す。英語教師のリーナさんが授業中に一年前の出来事を話題にすると、生徒たちは「思い出したくない」「また攻撃されるの?」と取り乱すという。恐怖の記憶は、子どもの心に深い傷痕を残している。

 サリン使用問題を巡っては直後に米国がアサド政権による攻撃と断定し、空軍基地を巡航ミサイルで攻撃。国連と化学兵器禁止機関(OPCW)による合同調査は昨年十月、政権軍が実行したと結論付けた。アサド政権は「でっち上げだ」と否定。後ろ盾になっているロシアは調査機関の中立性を疑問視し、調査継続について国連安全保障理事会で拒否権を行使。現地調査を実施できず責任追及も行われないまま幕引きされた。

 ハンシャイフンはサリン攻撃後、数百の家族が避難を余儀なくされた。その空き家には今、政権軍に包囲攻撃を受けている首都ダマスカス近郊の東グータ地区からの避難民が移り住んだという。自宅に一人残ったユセフさんは、激しい憤りを隠さない。「悔しいのは、家族の命を奪った犯罪者が今も、多くのシリア人を殺害していることだ。国際社会はなぜアサド(大統領)を許しているのか」

 

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