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【国際】

「新冷戦」へ懸念広がる 米欧とロシア、外交官追放合戦

 英国南部でロシアの元情報機関員セルゲイ・スクリパリ氏(66)らが兵器級の神経剤で襲われた事件は、四日で発生から一カ月。ロシアが関与を否定する中、米欧の主要国は英国に同調し、スパイとみなしたロシア外交官ら計約百五十人を追放した。ロシアも対抗し、世界規模の報復合戦に発展。「新冷戦」の幕開けとの悲観論も広がる。(ロンドン・沢田千秋、阿部伸哉、ワシントン・石川智規)

 「ロシアの関与以外、納得できる説明がつかない」。スクリパリ氏と娘のユリアさん(33)が英南部ソールズベリーの自宅近くで意識不明で発見された後、メイ英首相は、旧ソ連で開発された神経剤ノビチョクが使われたと発表し、ロシア政府に説明を要求した。

 英国が軍事大国のロシアと事を構えるには、国際的な後押しが不可欠になる。メイ氏は米仏独など北大西洋条約機構(NATO)主要国の首脳と電話協議を繰り返し、ロシアを孤立させることに奔走した。

 英政府は三月十四日、駐英ロシア外交官ら二十三人の追放を発表して先陣を切ると、二十六日には米国が英国を上回る六十人の外交官追放を決定。バルト海沿岸でのロシアの軍事力増強に頭を痛めるNATO加盟国の大半も追随した。

 ロシア側は「捜査が終わる前に判決を下している」(ラブロフ外相)と反発し米英を含む二十九カ国の外交官ら約百五十人の追放を発表。これに対しても米国は「対抗する権利がある」(国務省)とし、多くの米メディアが「冷戦終結後、最悪の関係」と評する事態に陥った。

 米国では二〇一四年のロシアによるウクライナのクリミア半島併合や、一六年の米大統領選へのロシア介入疑惑を受け、対ロ感情の悪化が続く。新たに大統領補佐官に指名されたボルトン元国連大使、国務長官に指名されたポンペオ中央情報局(CIA)長官は対ロ強硬派として知られる。

 ただ、トランプ大統領は例外扱いだ。再選したロシアのプーチン大統領に祝意を伝えて首脳会談を模索しており、対ロ協調の各国の政策にはほころびも出始めている。

 「反ロシア運動の展開の速さには驚かされる」。プーチン氏は三日、外遊先のトルコでの記者会見で危機感を吐露する一方、事件で使われた神経剤を調べている国際組織の化学兵器禁止機関(OPCW)が「何が起きたのか結論を出すだろう」と自信もみせた。

 プーチン氏は「同じような神経剤は約二十カ国で製造できる」と主張。ロシア製と断定するのは不可能とし、英政府の発表を「はったりだ」と決めつけた。

 ロシアは国際的に禁じられている神経剤の開発と保有をあくまでも否定し、トランプ氏との首脳会談に活路を見いだす構えだ。

◆日ロ間では対話活発化

 日本は先進7カ国(G7)の中で唯一、ロシア外交官の追放に加わっていない。英政府からは協力するように要請されているとみられるが、安倍晋三首相はプーチン大統領と5月の首脳会談実施で合意しており、日ロ間ではむしろ対話が活発化している。

 ロシアのガルージン駐日大使は3日、着任後初の記者会見を東京都内のロシア大使館で開き、事件をめぐるロシア側の立場を説明し、欧米の措置を非難した。日本に関しては「バランスの取れた対応に敬意を表したい」と話している。

 

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