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【国際】

シリア攻撃 ロシア、欧米へ対決姿勢

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◆米国 強硬派が後押しか

 【ワシントン=石川智規】トランプ米大統領は十三日、化学兵器を使用したとされるシリアのアサド政権に攻撃を命じた。保守強硬派のボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が九日に就任して早々、トランプ氏の決断に影響を与えたのは確実だ。ロシアが二〇一六年米大統領選に干渉するなどした疑惑「ロシアゲート」の捜査が進展する中、米国民の関心をそらして支持率を回復する狙いもあるとみられる。

 「シリア政府が化学兵器の使用をやめるまで攻撃を続ける用意がある」。トランプ氏は三月末、シリアからの米軍撤退を示唆したばかりだったが、一転して英国やフランスとともにシリア攻撃に踏み切った。

 ボルトン氏は、米国の価値観を広げるためには軍事力行使もいとわない新保守主義(ネオコン)派として有名で、〇三年のイラク戦争では大量破壊兵器を保有しているとし、開戦を強く主張した過去を持つ。シリアの後ろ盾であるロシアに対しても強硬姿勢で、シリアからの米軍撤退に否定的なマティス国防長官とともに、トランプ氏の背中を後押ししたとみられる。

 米国では軍事行動を始めると、大統領の求心力が高まり、支持率が急上昇する傾向がある。イラク戦争ではブッシュ(子)大統領の支持率が回復し、昨年四月のシリア攻撃直後の世論調査では、61%がトランプ氏の判断を支持し、不支持は31%にとどまった。

 ロシア疑惑を捜査するモラー特別検察官の要請などに基づき、米連邦捜査局(FBI)は九日、トランプ氏の個人弁護士の事務所と自宅を家宅捜索。トランプ氏の元不倫相手に支払った「口止め料」に関する資料などを押収し、捜査の進展が米メディアで連日報道されていたが、シリア攻撃開始後は一変した。

 日ごろはトランプ氏に批判的な報道で知られるニューヨーク・タイムズ紙(電子版)の記事へのコメント欄には「化学兵器の使用に対する報復だ」などと容認する意見が目立っている。

◆ロシア「主権国家への侵略」

 【モスクワ=栗田晃】英国で起きたロシア元情報機関員らへの神経剤襲撃事件で、ロシアは欧米との対立が深まる中でも、一貫してアサド政権を支え、化学兵器使用疑惑を否定してきた。プーチン大統領は声明でシリアへの攻撃を「主権国家への侵略行為」と非難し、欧米への対決姿勢を一層鮮明にした。

 ロシア国防省は攻撃直前の十三日、化学兵器使用は「英国が関与したでっち上げ」と主張。襲撃事件を受けてロシアに厳しい対応を取る英国に情報戦を仕掛けた。プーチン氏は、化学兵器禁止機関(OPCW)の調査チームが現地入りする直前の攻撃を疑問視し、「欧米各国は(調査を)露骨に無視し、結果を待たずに軍事作戦を実行した」と批判し、攻撃の正当性を問いただした。

 ただ、今回の攻撃でロシア軍に被害はない。プーチン氏が反撃を口にすることはなく、ロシア国内でも反撃を求める意見は少ない。

 二〇一五年九月のロシア参戦以来、シリア内戦でのアサド政権の軍事的優位は動かない。ロシアとシリアの同盟関係は、シリアがフランス植民地からの独立を目指し、旧ソ連に協力を求めた第二次大戦時からの長い歴史がある。ロシアはアサド政権を支える見返りとして、中東で影響力を行使する軍事拠点をシリア国内に維持してきた。

 米国との対立を深め、戦況を混迷させるのはロシアにとっても得策ではない。政権に近い外交専門家のフョードル・ルキヤノフ氏はタス通信に対し「今回の攻撃はシリア情勢に影響を及ぼさない。米ロ間の緊張がエスカレートすることはないだろう」と述べ、ロシアによる反撃を否定する。

 トランプ氏は近い将来の米軍のシリア撤退を示唆しており、ルキヤノフ氏は「米国の目的は武力を誇示することだけだ。ロシアは従来のシリア政策を進めていく」と指摘した。

◆日本 首相、米英仏を支持

 安倍晋三首相は十四日、米英仏三カ国によるシリア攻撃について「化学兵器の使用は断じて容認できない。化学兵器の拡散と使用を許さないとの米英仏の決意を支持する」と表明した。北朝鮮の核・ミサイル開発問題への連携対処や日米同盟強化の観点から、トランプ米大統領との協調を維持する必要があると判断した。国家安全保障会議(NSC)関係閣僚会合を官邸で開き、今後のシリア情勢を分析。米英仏との連携を図るとともに、情報収集に全力を挙げるよう指示した。

 首相発言は、米軍が昨年四月にシリアを巡航ミサイルで攻撃した際の見解を基本的に踏襲し、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとの表現も避けた。後ろ盾となっているプーチン・ロシア大統領への配慮のほか、日本が独自に、アサド政権が本当に化学兵器を使ったと断定するのは難しいとの事情があるとみられる。

 日本はロシアとの間に北方領土問題を抱え、首相は来月下旬にロシア訪問を控えている。

 首相は「今回の行動は、(シリアにおいて)これ以上の事態の悪化を防ぐための措置だと理解する」と記者団に説明。十七日からの訪米時の日米首脳会談では、シリア問題が議題になるとの見通しを示した。河野太郎外相は外務省で記者団に、米国から攻撃の事前連絡があったかどうかについては明言を避けた。

 小野寺五典防衛相は十四日午前、防衛省に幹部を集めて会議を開き、対応を協議。小野寺氏は記者団に、今回の攻撃を受け、国際情勢への影響を注視する考えを示した。

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