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【国際】

化学兵器巡り対立激化 ロ「映像は英関与のやらせ」英「醜悪で見え透いたうそ」

化学兵器攻撃があったとされるシリア・ドゥーマで、廃虚の中を歩く子供たち=16日、共同

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 【モスクワ=栗田晃、ロンドン=沢田千秋】シリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑で、米英仏三カ国のシリア攻撃を後押しした映像をめぐり、ロシア側が「英国が関与したやらせだ」と情報戦を仕掛けている。英側は「醜悪で見え透いたうそ」と強く反発。化学兵器禁止機関(OPCW)の調査団は二十一日から現地に入って試料を採取し分析を進めるが、政治的な対立が先行し、真相究明を困難にしている。

 映像は、内戦で活動する救援組織「シリア民間防衛隊(ホワイトヘルメッツ=WH)」が、首都ダマスカス近郊東グータ地区ドゥーマで、七日の空爆後に撮影したとして公開。病院で水をかけられ、化学兵器被害の手当てを受ける子どもたちの姿が、世界中でアサド政権への非難を強めた。

 ロシア国防省は英国がWHに圧力をかけ、「攻撃の口実をでっち上げた」と主張。その証拠として、ロシア国営テレビは十八日、映像の少年(11)が元気な様子で「誰かが『病院に行け』と叫んだから急いで行った」と証言するインタビューを放送した。ロシア側は、少年をOPCWや国連安全保障理事会で証言させることも検討している。

 英南部で起きた元ロシア情報機関員の襲撃事件で、英国はロシアの関与を断定し、欧米各国にロシア外交官追放の輪を広げた。ロシアがシリアで英国の捏造(ねつぞう)を主張するのは、襲撃事件の意趣返しの側面もある。

 ロシアの主張に対し、英側は「プロパガンダの中でも最悪だ」(ピアース英国連大使)と不快感を隠さない。WHは二〇一三年、元英軍人ジェームズ・ルムジュリアー氏がシリア人を訓練し、トルコで結成したとされ、約三千人が参加。メンバーは白いヘルメット姿で治療や救出に当たり、映像や写真をネット上に公開している。

 ルムジュリアー氏は一六年、英紙インディペンデントの取材に、資金提供元として英独両政府や米ファンドを挙げ、約二千三百万ドル(約二十四億七千万円)の支援を受けたことを明かしていた。

 メディア論を研究するロンドン大学のディナ・マター教授は「アサド政権寄りの地元メディアと違い、シリアの現状を知る重要な情報源だ」と指摘している。

◆悲劇の本質を隠す

 <東京外大の青山弘之教授(シリア政治)の話> シリアで化学兵器が使われたとされる映像の真偽の判断は、政治的立場に左右されている。ホワイトヘルメッツは医療団体だが、反アサド政権の組織として欧米の資金援助を受け、市民に徹底抗戦を呼び掛けていたことも事実だ。映像を使った派手な資金集めをした結果、欧米のプロパガンダの道具にされ、今や米ロの綱引きに利用されている。最大の問題は映像の信ぴょう性が問われる陰で、シリア市民に起きている悲劇の本質を見えづらくしていることだ。(聞き手・沢田千秋)

 

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