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【国際】

<サウジ維新 普通の国へ>(下)進む労働力の自国民化 外国人、国策の標的に

首都リヤド南部ウィザラト地区の一軒家で、共同生活を送るパキスタン人たち

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 強い日差しが注ぐ日中なのに、二階建ての一軒家は薄暗く、玄関に靴が散乱している。サウジアラビアの首都リヤド南部のパキスタン人街。パンジャブ地方出身の出稼ぎ労働者十二人が共同生活を送っていた。

 フェザンさん(25)は配車サービス・ウーバーの運転手。「注文が入るのは夕方から」と言って二段ベッドに腰掛けて紅茶をすすった。一日百七十リヤル(約五千円)で車を借り、手元に残るのが収入だ。農業を営む両親に月三千リヤルを仕送りするが、その表情はさえない。「今の状況が続くなら、サウジを離れるしかない」

 サウジは人口三千三百万人のうち37%を外国人が占め、民間労働力の八割をパキスタンやインド、エジプトなどの外国人労働者に依存する。一方で、サウジ人の七割は高給を約束された公務員。潤沢な石油収入を元手に多額の補助金で国民の暮らしを支えてきた。

 だが、二〇〇〇年に二千万人だった人口は三〇年には三千五百万〜四千万人に達する見通し。このままでは国家財政が破綻しかねない。改革の指針「ビジョン2030」では12%に高止まりする失業率を7%に引き下げる目標を掲げた。

 標的となったのが外国人労働者だ。「労働力のサウジ人化」を進める政府は、昨年七月から外国人労働者の家族に課税を始めた。まずは一人当たり月額百リヤル(約三千円)。さらに一年ごとに百リヤルずつ増えていく。

 フェザンさんは一年前まで、ビル建設現場の技術者だった。しかし、会社から契約を打ち切られ、あちこちの建設会社に履歴書を送ってもなしのつぶて。「自国民に切り替えているのだろう」。フェザンさんの住むウィザラト地区は今、空き部屋が目立つ。

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 雑貨店に買い物に来たバハラシさん(40)は半年前に突然、中国資本の電話会社を解雇された。「六カ月分の給料が未払い。受け取ったら帰国するつもりだ」と言う。近くの靴店はパキスタン人店員が帰国後、新たに店員を確保できずに閉鎖された。サウジ人は管理職や高給を求める傾向が強く、現実の求人と合わない。

 深刻なのは二〇一五年から内戦下にある隣国イエメンの出身者だ。百万人のイエメン人の中には陸路で密入国した人も多いが、政府は難民の存在を認めていない。サウジ内務省によると、不法滞在者の取り締まりを強化した昨年十一月から八十万人を摘発した。

 洋服店で働くアクラムさん(37)は「複数の友人が拘束され、いずれ強制送還される」と言って嘆いた。「パキスタン人は困ったら帰る場所がある。私たちにはない」 (リヤドで、奥田哲平、写真も)

 

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