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【国際】

中東「核ドミノ」危機再燃 イランの査察拒否懸念

 【カイロ=奥田哲平】トランプ米大統領が八日、イラン核合意からの離脱を表明し、経済制裁を復活する大統領令に署名した。イランは核合意に残留する姿勢を示すが、その一方で、ウラン濃縮活動の再開も示唆。国際的な査察体制が揺らげば、秘密裏の核兵器開発が再開され、中東に「核拡散ドミノ」の危機が再燃しかねない状況だ。

 核合意は、イランに平和的な核利用を一定程度認めながら、国際的な監視下に置いて軍事転用を防ぐ仕組み。ウラン濃縮を制限し、核爆弾製造の完成まで「二〜三カ月」に迫っていたのを最低一年かかるよう歯止めを掛けた。国際原子力機関(IAEA)は厳格な検証体制を構築。過去二年間、イランが合意内容を順守していると結論付ける。

 そうした中でトランプ氏が決断した離脱は、査察に応じない口実をイランに与えかねない。封じられた遠心分離機の使用などを再開しても、査察が拒否されると実態は見えなくなってしまう。サレヒ原子力庁長官は「技術的には、合意前よりも高濃度のウランを生産することが可能だ」と強気の姿勢を示す。

 中東ではイスラエルが事実上の核保有国。サウジアラビアのムハンマド皇太子は「イランが核兵器を開発すれば、すぐに追随する」と公然と述べ、対抗心を隠さない。

 一方、核合意離脱を引き金に、内戦下のシリアを舞台とした中東情勢の緊迫化も避けられない。米シンクタンク「戦争研究所」によると、シリアにはイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」や民兵組織の拠点が三十カ所以上あるとされる。

 これを安全保障上の脅威と捉えるイスラエルは越境攻撃を繰り返す。シリア人権監視団(ロンドン)によると、トランプ氏の発表直後には首都ダマスカス南郊の武器庫に向けてイスラエルがミサイルを発射、革命防衛隊を含む十五人が死亡した。報復に備え、北部地域の地元当局に避難用シェルターの開放を指示した。

 イスラエルには、イランが核合意で得た経済的利益がシリアなどでの勢力拡大を可能にしたとの批判が根強い。米国の合意離脱でイランが方針転換する保証はない。

 イスラエル有力紙ハーレツのコラムニスト、ギデオン・レヴィ氏は「ネタニヤフ首相にとって、離脱は大きな勝利だ。ただ、真の狙いは米国を対イランの軍事行動に巻き込むことだ」と指摘する。

 

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