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【国際】

四川大地震10年 復興事業の成果、習氏改めて強調

四川省什〓(2)市にある地震を記念する博物館で、被災した小学校の当時の様子を再現した展示=10日

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 【成都(四川省)=中沢穣】中国で死者・行方不明者約八万七千人を出した四川大地震から十二日で十年を迎えた。十年の節目を迎え、習近平(しゅうきんぺい)指導部はトップダウンで行われた復興事業の成果を改めて強調。自然災害を克服した共産党政権の業績として印象づけようとしている。

 新華社通信によると、習近平国家主席は成都市内で開かれた国際シンポジウムにメッセージを寄せ、「党の強力な指導下で行われた復興事業は、世界に貴重な経験を提示する」と自賛した。習氏は二月に四川省〓(1)川(ぶんせん)県映秀を訪れ、倒壊した中学跡地を「愛国主義教育基地」にするよう指示するなど、復興を政権への支持につなげようとしている。実際、被災地では政府主導でインフラ整備が進み、経済が大きく発展した。

 一方、官製メディアは被災地で進む高齢化や過疎化など負の部分はほとんど伝えていない。外国メディアへの締め付けも厳しい。十二日午前には香港のテレビ局記者が取材中に何者かに殴られる事件も起きた。

◆「一人っ子」先駆け、進む高齢化

 震源から約40キロの四川省什〓(2)(じゅうほう)市は「一人っ子政策」のモデル地区とされ、中国全土よりも8年早くから出産数が制限された。全国より早く高齢化率が上昇する中、地震で唯一の子どもを失った家庭も少なくない。 (四川省什〓(2)市・中沢穣、写真も)

 「『二人目を産むぐらいなら、(妊娠中絶して)墓を一つ作ったほうがましだ』。こんなスローガンもあったぐらい、什〓(2)の出産制限は厳しかったよ」

 地震で高校生だった長男を失った農家の男性(52)は振り返る。本紙の電話取材に「もちろん悲しかったが、こんな家庭はここでは珍しくない」とも語る。同市では四十以上の学校が倒壊し、子どもと教師計約六百人が命を落とした。

 男性の夫婦は地震後は子宝に恵まれず、女の子を養子に迎えた。現在は小学校に通うが、男性は「地震の後、子どもの学費は無料にするとか政府はいろいろと約束した。でも一つも実現していない」と憤る。八十歳を超えた両親の介護を抱えて出稼ぎにも出られず、生活は苦しい。

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 地元紙などによると、同市では一九七一年に出産制限が始まり、人口増加率が激減した。この「成功」事例を踏まえ七九年から中国全土で「一人っ子政策」が導入されたという。「(出産制限が)中国で最も早く実施され、最も効果を上げた」(地元紙)と評価され、当時は政府や共産党の中枢が集まる北京でも知られた地名だったという。

 同市ではその後も「一人っ子政策」が厳格に適用され、現在でも子どもを持つ家庭の六割以上が一人っ子だ。二〇一五年に「一人っ子政策」が全国で撤廃されるまで、同市では政策によって出生数が四十万人も減ったという統計もある。現在の人口は四十三万人だ。

 結果として高齢化社会が全国に先駆けて到来し、一二年時点で同市の高齢化率(六十歳以上)は20%近く、全国平均よりも約5ポイント高い。市の財政に負担が重くのしかかるが、同市計画生育局は「外国メディアの取材は受けていない」とした上で、「高齢化問題は確かに存在するが、中国全土もこの問題に直面している」と答えた。

※〓(1)は、さんずいに文

※〓(2)は、方におおざと

 

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