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【国際】

「なぜ」ガザ悲痛 イスラエル軍と衝突 死者61人に

15日、パレスチナ自治区ガザで、乳児の遺体を引き取り悲しみに包まれる家族ら=奥田哲平撮影

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 【ガザ市(パレスチナ自治区)=奥田哲平】在イスラエル大使館をエルサレムに移転した米国に抗議する大規模デモは、七十年前のイスラエル建国でパレスチナ人が難民化した「ナクバ(大惨事)」の日の十五日も、前日に引き続きパレスチナ自治区ガザであり、ガザ保健当局は十五日、イスラエル軍の銃撃で男性一人が死亡したと明らかにした。十四日からのデモで死亡したパレスチナ人は計六十一人に上った。

 保健当局によると、銃撃などによる負傷者は計二千七百人超。「虐殺だ」と糾弾するパレスチナ自治政府に対し、イスラエルのネタニヤフ首相は「行動を続ける」と主張している。国連安全保障理事会は十五日午前(日本時間同日深夜)緊急会合を開いた。英国とフランスはイスラエルに武器使用の自制を要求。トルコと南アフリカは駐イスラエル大使召還を決めるなど国際社会の批判が相次いでいる。

◆デモに発砲 幼子も犠牲

 在イスラエル大使館をエルサレムに移転した米国に抗議する大規模デモで、二〇一四年以来最悪の被害を生んだガザ地区では十五日、各地で葬儀が営まれ、悲しみと怒りに包まれた。犠牲者の一人は生後八カ月の女の子ライラちゃんだった。繰り返されるデモと、それを抑え込むイスラエル軍の応酬が幼子の命を奪った。

 ガザ市内の病院の遺体安置所。パレスチナの旗に包まれた小さな体が遺族に手渡されると、家族が泣き叫んで抱き締めた。「この子に罪はない。なんでこんな目に遭うのか」。母マリアンさん(18)が悲しみに暮れた。長男が生後一カ月で亡くなり、ようやく誕生したのがライラちゃんだった。

 親族によると、ライラちゃんをデモが実施されたイスラエル境界に連れて行ったのは、面倒を見ていたマリアンさんの弟(13)。「何が起きるか見たかっただけなんだ。姉もその場にいると思った」。だが、マリアンさんはいなかった。

 デモには四万人が参加。参加者によると、イスラエル軍は十四日、最前線から七百メートル離れ、女性や子どもが見ていた場所にも催涙弾を撃ち込んだ。親族がライラちゃんを見つけて連れ帰ると、穏やかに寝ていると思った顔が、すでに青白くなっていた。病院では催涙弾の煙を吸った窒息死と告げられた。

 ガザは〇七年にイスラエルとの武力闘争を繰り返すイスラム主義組織ハマスが実効支配すると、イスラエルは高い壁やフェンスで囲み、封鎖した。移動の自由はほとんどなく、パレスチナ人権センターによると、失業率は七割を超え、劣悪な環境は世界最悪レベルだ。

 三月末からパレスチナ難民の帰還を求めるデモが続き、イスラエル軍との衝突で犠牲者は百人を超えた。多くが銃撃で死亡した。同センターのラジ・スラーニ代表は「狙撃手は明らかに顔や上半身を狙った。イスラエルは十一年間も私たちの生きる尊厳を傷付け、平和的なデモさえも許さない」と非難する。

 ムハンマド・ウバシさん(19)は安置所で、一緒にデモに参加した兄ヤザンさん(20)の遺体を待っていた。目のあたりを撃ち抜かれ、即死だった。「兄の血は、ガザとエルサレムのために流された。葬儀を終えたら、またデモに行く」 (ガザ市で、奥田哲平)

 

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