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【国際】

苦境のガザ 閉塞感 「経済封鎖」「米支援削減」「統一政府暗礁」 

16日、パレスチナ自治区ガザの市場で買い物をする住民ら

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 パレスチナ自治区ガザでは十六日、在イスラエル大使館をエルサレムに移転した米国への抗議デモがほぼ沈静化した。二〇〇七年以来続くイスラエルの経済封鎖に加え、米国による難民支援の削減、対立する自治政府の締め付けという苦境にさらされ、生活環境が悪化。住民の怒りは「デモでは何も変わらない」との閉塞(へいそく)感に覆われる。 (ガザ市で、奥田哲平、写真も)

 ガザ市中心部のザウィヤ市場。ワヒーブ・アシュールさん(58)が宝石店を訪れ、純金製の腕輪二本を売り、八百ヨルダンディナール(約十二万円)を受け取った。腕輪は一週間前に病気で亡くなった妻の遺品だ。玩具商を営むが、「最近は景気が悪く、借金を返すためには仕方ない」と諦めたように話した。

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 翌日に始まるラマダン(断食月)を前に、昨年までは買い物客で混雑した市場は閑散とし、飾り付けもない。「デモで多くの若者が死んだのに、ラマダンを祝う気持ちにはなれない」という声も聞こえた。

 イスラエルに高い壁やフェンスで隔離され、テロ対策との名目で人や物資の移動が制限されるガザ地区。経済状況は年々悪化する上、燃料不足で使用できる電気は一日三〜六時間。汚水処理場が機能せずに汚水が海に垂れ流される。

 エルサレムをイスラエルの「首都」と認定した米国は今年一月、和平交渉を拒否する自治政府に圧力をかける狙いで、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を半額以上凍結。しわ寄せは人口百九十四万人の三分の二が難民のガザに集中する。

 UNRWAのアドナン・ハスナ報道官は「今のところ食料支援は削減していないが、将来は分からない」と懸念。難民キャンプの配給所で、三カ月に一度の小麦粉や油などを受け取りに来たインサフ・カルーさん(58)は「今も足りないのに、減らされたら生活できない。米国は私たちを苦しめたいのか」と憤った。

15日、パレスチナ自治区ガザのイスラエルとの境界付近で、イスラエル軍の催涙ガスを浴びて逃げる少年ら

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 住民が抗議デモへの熱気を失いつつあるのは、ガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスと自治政府の内部対立も理由だ。両者は昨年十月に統一政府の樹立で合意したが、交渉は暗礁に乗り上げた。自治政府は、ガザの公務員給与を削減するなど圧力をかける。

 十五日のデモを遠目に見ていたタクシー運転手(51)は「デモを繰り返しても生活の助けにはならない。一部のハマス幹部や自治政府が誰かから寄付を得るためだろう。その金は庶民には回ってこない」とうんざりした様子。ハマスの戦略も曲がり角に来ている。

 

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