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【国際】

募る不満 軍政に屈せず タイ・クーデターから4年

タクシン元首相とインラック前首相らの画像を映したスマホを手に話すゴーンチャイさん=15日、タイ東北部ノンフーリン村で

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 タイの軍事クーデターから二十二日で四年になる。軍政は民政移管のための総選挙を来年二月までに実施するとしているが、先送りを重ねており、予断を許さない。クーデターで政権を追われたタクシン元首相派の牙城だった東北部ウドンタニ県を歩くと、軍政の圧力に息を潜める人々の不満が漏れてきた。 (ウドンタニで、北川成史、写真も)

 二〇一一年の下院選でタクシン派政党が有効投票の80%近くを得たウドンタニ県。今ではタクシン派のシンボルカラーの赤い横断幕、タクシン氏や妹のインラック前首相の写真は見当たらない。郊外のノンフーリン村を訪れた。そこにはかつてタクシン派を公然と掲げた「赤シャツ村」の面影はなかった。

 「多くが変わった」。村長のゴーンチャイ・チャイカンさん(50)の表情は硬い。一四年五月のクーデター後、兵士が村に来て、横断幕や写真を取り上げた。残ったのは兵士が見落としたタクシン氏のサイン入り洗面器だけだ。

 一回三十バーツ(約百円)の低額医療やコメの高値買い取り制度など、タクシン派による貧困層や農村対策が貧しい東北部の民心をつかんだ。ゴーンチャイさんは政治活動を控えているが、タクシン氏への評価を尋ねると思いがあふれた。「彼は有言実行だった。私の体を切れば分かる。今も『赤い血』が流れている」

 軍政側も東北部で臨時閣議を開き、インフラ投資を打ち出すなど、タクシン派の地盤切り崩しを図るものの、恩恵の実感は少ない。

 ウドンタニ中心部の市場で果物を売る男性は「農作物の価格は落ち込み、クーデター前と比べて利益は七割減った。もうけているのは大企業だけだ」と切り捨てる。

 クーデター後、タクシン派幹部らの逮捕が相次いだ。クワンチャイ・プライパナーさん(65)もその一人。ウドンタニ郊外でラジオ局を運営し、自らタクシン派の主張を広めていた。しかし一六年、反タクシン派への襲撃に関わったとして有罪判決を受け服役している。

 現在、妻が代わって運営しているが、時事問題については新聞を読み上げるだけで論評は控えている。

 ラジオ局の屋内にはタクシン氏の肖像画が掲げられていた。息子のバードさん(31)は「軍は『外せ』と言うが、私たちの建物だ」と意地を見せる。

 「タクシン派は減っていない」と主張するバードさん。総選挙で勝ち、国外逃亡を続けるタクシン氏が帰国、再び首相に就く夢を抱く。ただ四年という歳月が不安を呼ぶ。「人々がタクシン氏を忘れるまで、選挙が延期され続けるのではないか」と懸念する。

 

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