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【国際】

EU、数日中にWTO提訴 米国輸入制限発動で対抗

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 【ブリュッセル=阿部伸哉】米政府が一日から欧州連合(EU)などからの鉄鋼・アルミニウムに輸入制限を発動したことに対し、EUは数日中に世界貿易機関(WTO)に提訴し紛争処理の手続きに入る。EU通商政策を担当するマルムストローム欧州委員が一日、明らかにした。米国が理由としている「安全保障上の脅威」はなく「単なる自国産業の保護」と主張し、無効を訴える。

 EUは対抗措置として二十日から計二十八億ユーロ(約三千五百億円)分の米国産品に25%の報復関税を課す。バーボン、ハーレーダビッドソンのオートバイ、ジーンズなどの米産品が含まれるとみられる。EUの主張がWTOで認められた場合、さらに三十六億ユーロ分の産品に追加関税する。

 米国は輸入鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を発動。WTOでは保護主義による高関税に対抗するため相応の追加関税が認められている。EUは米国の高関税の対象となる鉄鋼などの総額は六十四億ドルと見積もっている。

 EUは一日、中国も外国企業に技術移転を強要しているとしてWTOに提訴すると発表。マルムストローム氏は「どの国にも平等に多国間ルールの順守を求めている」として、米への対抗措置を正当化した。

 このほか、カナダは七月一日から米国産鉄鋼、ヨーグルトなど百六十六億カナダドル(約一兆四千億円)分に追加関税を発動。

 メキシコも米国産豚肉やリンゴ、チーズなどに高関税を課すと発表しており、報復の動きが広がっている。

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◆仏が非難「銃突きつけた交渉」

 米政府は主要経済圏を軒並み敵に回して自国利益を追求することになった。「安全保障上の脅威」を理由に同盟国ですら標的とする態度にEUなどは業を煮やす。八、九の両日、カナダ・シャルルボワで開かれる先進七カ国(G7)首脳会議(サミット)で米国の孤立は深まりそうだ。

 「違法であるだけでなく、あらゆる点で間違っている」。フランスのマクロン大統領は五月三十一日、語気を強めて米の輸入制限を批判した。「銃を突きつけられての交渉には応じない」と、貿易戦争の瀬戸際まで追い込んで譲歩を引き出そうとする米政府をなじった。

 EUなどへの輸入制限適用は三十一日、ロス米商務長官が訪問先のパリで発表。四月の訪米で「米仏蜜月」を演出したマクロン氏は面目を失った。

 G7ホスト国のカナダのトルドー首相も「高関税は、同盟国として米軍とともに命を落とした何千ものカナダ軍兵士への侮辱だ」と米国を非難した。

 EUは「問題は中国による鉄鋼のダンピング」だと主張。だが米政府は、中国製鉄鋼が第三国経由で米国に流入しているとして、EUなどへの制限を正当化し、自動車の輸入規制にまで踏み込もうとしている。

 米国でもトランプ政権の手法に疑問の声が出始めている。米商務省によると、今年一〜三月期に米国が輸入した鉄鋼の44%はEU、カナダ、メキシコ産。大口ユーザーの米自動車工業会は「業界の国際競争力を脅かし、車両コストが上昇する」と懸念を表明した。

 一方、麻生太郎財務相は、訪問先のカナダ・ウィスラーでムニューシン米財務長官に輸入制限から日本を除外するよう要請するにとどまっている。

 トランプ米大統領の強引さは、秋の中間選挙に向け、製造業がさびれた中西部一帯の有権者にアピールする狙いとの見方が強い。選挙後トーンダウンするとの読みもあるが、米外交問題評議会シニアフェローのエドワード・アルデン氏は「トランプ氏は過去四十年間『開かれた貿易は米国にとって悪だ』との主張を繰り返しており、政治的な動機というより信念だ」と指摘する。

 「報復関税の連鎖」は競争相手の中国だけでなく、親密な同盟国にも広がり「米国の理不尽な要求に妥協できない国は米国と戦うことを選ぶだろう」と摩擦の長期化を予想する。 (ブリュッセル・阿部伸哉、ワシントン・白石亘)

 

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