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【国際】

米、即時非核化を留保 「北経済支援 日中韓で」

 【ワシントン=石川智規】トランプ米大統領は一日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談を、当初予定の十二日にシンガポールで開催することを表明した。一方で、北朝鮮の非核化は「一度の会談で実現できるとは言ってない」とし、即時の非核化を留保。米国は非核化の見返りとなる経済支援を負担せず、日中韓が協力すべきだとの考えを示した。

 ホワイトハウスで北朝鮮の金英哲(キムヨンチョル)党副委員長(党統一戦線部長)から正恩氏の親書を受領、会談した後に記者団に述べた。

 トランプ氏は親書を「興味深い」と歓迎。「北朝鮮と関係を構築できる」と期待感を示した。正恩氏が非核化に取り組むかとの問いに「そうなるだろう。疑いはない」と明言した。

 だが、非核化の手法や達成時期などを巡り、米朝間にはなお意見の隔たりがある。トランプ氏は十二日の会談で「(非核化は)プロセスであり、何かの(合意文書に)署名をすることはないだろう」と述べた。

 会談では、朝鮮戦争(一九五〇〜五三年)の終戦宣言について「歴史的に重要だ」と、今後議論する考えを示した。人権問題は取り上げなかったといい、日本の拉致問題は議論されなかった。

 北朝鮮への経済制裁に関しては「最大限の圧力という言葉はもう使いたくない」と強調。「協議決裂まで新たな制裁は科さない」との考えを伝え、北朝鮮の行動に応じて柔軟に対応する構えをみせた。

◆「圧力」封印 長期化の様相

<解説> トランプ米大統領は一日、中止を通告していた米朝首脳会談を復活させた。史上初の会談実現を優先した結果、対北朝鮮外交の根幹で、軍事行動も辞さない「最大限の圧力」路線も封印。米国と歩調を合わせてきた日本にも大きな影響を与えるのは必至だ。

 トランプ政権はこれまで「過去の政権が繰り返した失敗の歴史を繰り返さない」と強調。首脳会談は「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」の達成に道筋をつけるのが目的であり、達成されるまで最大規模の経済制裁などで北朝鮮に圧力をかけ続ける方針だった。

 それが一転、会談の位置付けは「プロセスの始まり」に後退し、「(非核化には)時間をかけて構わない」と、複数回の首脳会談が必要との考えも表明。北朝鮮が主張する段階的な非核化にも一定の理解を示すような発言が目立った。

 事務方や閣僚級の折衝を重ねた上で首脳会談に臨む通常の外交交渉とは大きく異なるトップダウンによるトランプ流の交渉が、朝鮮半島の危機を打開するチャンスを生んだのは間違いない。一方、過去の政権が失敗を繰り返してきたほど、北朝鮮の核問題は解決が難しく、綿密で実務的な交渉の積み重ねも求められる。

 会談そのものに意味を見いだし、非核化という実質的な内容を先送りするというのでは、トランプ氏が目指す「歴史的偉業」はおぼつかない。 (ワシントン・石川智規)

 

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