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【国際】

軟禁の君に 友情の詩 谷川俊太郎さんから 故劉暁波さん妻・劉霞さんへ

谷川俊太郎さん

写真

 ノーベル平和賞を受賞した中国の民主活動家・故劉暁波(りゅうぎょうは)さんの妻で、中国当局に軟禁されている劉霞(りゅうか)さん(57)の詩集に、詩人の谷川俊太郎さん(86)が一編の詩で応えた。<言葉で慰めることも/励ますこともできないから/私は君を音楽でくるんでやりたい>。苦境に寄り添う温かい詩は、劉霞さんに届いているだろうか。 (小佐野慧太)

 劉霞さんの詩集「毒薬」は三月、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)(福岡市)から翻訳出版された。中には、軟禁中の悲痛な心境を表現した詩がある。

 <もううんざり 見えるだけで歩けない道/もううんざり 汚れた青空/もううんざり 涙を流すこと>(「無題−谷川俊太郎にならい−」)

 末尾には二〇一六年九月の日付。ドイツ在住の作家、廖亦武(りょうえきぶ)さんの元に知人を介して届いたもので、学習ノートを切り取った紙に手書きで記されていた。

 谷川さんの詩「無題」を踏まえて作られた作品だ。谷川さんの詩は中国でも評価が高く、一一年に詩歌の民間最高賞「中坤(ちゅうこん)国際詩歌賞」を受賞している。劉霞さんも作品に親しんでいたとみられる。

 出版元が谷川さんに詩集を贈ると、お礼の言葉と共に「劉霞に」と題する詩がファクスで届いた。

 谷川さんの詩は、劉霞さんの詩を翻訳した在日中国人作家の劉燕子(りゅうえんし)さんが中国語に訳し、自身のフェイスブックで公開しているが、劉霞さんが目にしているかどうかは分からない。

 谷川さんは「(劉霞さんの詩からは)緊張感が伝わってきました。僕も詩を書いたのは、詩人の友情から。自分の詩が中国で伝わっていることへの感謝の思いもありました」。劉霞さんのことは報道で知っていたが、軟禁されている苦境は「詩集を読んで具体的に知りました」と語っている。

 書肆侃侃房の田島安江代表は「谷川さんの詩を劉霞さんが読んだら、きっと涙を流して喜ぶはず。中国ではインターネットへの規制が厳しくていつ本人に届くか分からないけれど、そんな日が来ることを願っています」と話す。

◇「劉霞に」 

言葉で慰めることも

励ますこともできないから

私は君を音楽でくるんでやりたい

どこからか飛んで来た小鳥の君は

大笑いしながら怒りを囀(さえず)り

大泣きしながら世界に酔って

自分にひそむ美辞麗句を嘲(あざ)笑い

見も知らぬ私の「無題」に

君の「無題」で返信してくれた

そうさ詩には題名なんてなくていい

生きることがいつもどこでも詩の題名

一度も行ったことのないところ

これからも行くことはないところ

国でもなければ社会でもない

そんな何処かがいつまでも懐かしい

茶碗(ちゃわん)や箸や布団や下着

言い訳やら嘘(うそ)やら決まり文句

そんなものにも詩は泡立っている

君のまだ死なない場所と

私のまだ死んでいない場所は

沈黙の音楽に満ちて

同じ一つの宇宙の中にある

 (ルビは本紙が記載)

<劉暁波・劉霞さん夫妻> 劉暁波さんは、1989年の天安門事件につながる民主化運動を指導した1人。2008年、共産党一党独裁の廃止や言論の自由を訴える「〇八憲章」を起草して拘束され、09年に国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受けた。10年、獄中でノーベル平和賞を受賞。17年7月、多臓器不全のため61歳で死去。妻で詩人・写真家の劉霞さんは、ノーベル賞の授賞式直前に北京の自宅で軟禁状態に。国内外の支援者らが、精神状態の悪化などを訴え解放を求めている。

<谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)> 1931年、東京生まれ。52年に詩集「二十億光年の孤独」でデビュー。テレビアニメ「鉄腕アトム」の主題歌の作詞のほか、絵本、翻訳、脚本でも活躍。主な詩集に「世間知ラズ」(萩原朔太郎賞)、「トロムソコラージュ」(鮎川信夫賞)など。“詩壇の芥川賞”と呼ばれるH氏賞を日本で受賞した詩人の田原(でんげん)さんが、中国で積極的に作品を翻訳、紹介している。

 

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