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【国際】

英高層住宅火災1年 不備重ねた惨事 政府調査に専門家証言

 【ロンドン=沢田千秋】ロンドンの二十四階建て住宅「グレンフェル・タワー」が全焼した火災から一年となった十四日、現場近くの教会など各地で追悼式が開かれた。英政府による火災原因の公開調査は五月下旬、犠牲者七十二人の遺族の意見陳述から始まり、現在も現場を分析した学者や消防士らの証言が続く。

◆発生

 タワーは一〜四LDKの百二十七戸からなる公営住宅で、高級住宅街ケンジントンの一角にある。この地域の公営住宅の平均家賃は月五百ポンド(約七万五千円)で、一般住宅の平均三千八百ポンド(約五十六万円)に比べ格段に安く、移民ら低所得者層が多く暮らしていた。

 火災は昨年六月十四日午前一時ごろ、タワー五階の一室で発生。台所の冷蔵庫付近が火元とみられるが、出火原因は不明。炎は台所の窓から外壁に燃え移り、わずか三十分後に地上約七十メートルの最上階に到達。午前五時前には、タワー全ての外壁が炎に包まれた。

◆原因

 外壁には、可燃性材料を含む外装材が使われ、延焼を拡大。外装材と断熱材の間の通気層が炎の通り道となり、消火を困難にした。避難経路は内階段一つしかなく、階段への扉も一九七二年の建設時のままで、現行の防火基準を満たしておらず、スプリンクラーも設置されていなかった。火災安全工学の専門家は「数々の法令違反体質はグレンフェル・タワーの文化となっていた」と批判する。

 住民への指示の不適切さも指摘された。英国の集合住宅は耐火性が高いため、火元の部屋で鎮火する想定の下、住民への指示は「その場で待機」が一般的だ。延焼後もなお、消防隊は待機を指示し続け、避難指示に切り替えたのは火災発生から二時間後だった。

◆責任

 ロンドン消防隊は、避難指示について「設計や構造が分かっていれば、違う指示もあったかもしれないが、不可能だった」と弁明した。

 外装材と断熱材は二〇一五〜一六年の修繕工事で、コンクリート壁の表面に取り付けられた。被害者の弁護士は「高級住宅街にあるため、タワーの見た目を重視し基準外の外装が使われた」と主張。タワーを管理するケンジントン・チェルシー行政区は「修繕は住民のための一般的な設備改善だった」と反論した。

 外装材の製品自体は法令違反ではないが、材料となったアルミパネルやポリエチレンは防火基準で「十八メートル以上の建物には使うべきではない」とされている。

 公開調査は事実関係を確認する第一段階が十月まで予定され、第二段階から責任追及の作業が始まり、外装工事の請負業者と外装材メーカーが証言する。

 

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