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【国際】

英、EU完全離脱か苦慮 車業界「関税同盟」残留を要求

26日、ロンドンで、英国のEU離脱への不安を口々に語る自動車メーカー担当者ら=阿部伸哉撮影

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 【ロンドン=阿部伸哉】英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、英産業界がメイ政権に「譲歩」を求めて声を上げ始めた。来年三月の英離脱に向け、両者は十月には離脱条件で基本合意しなければならないが、交渉の行方は見えない。日系企業もしびれを切らす中、北アイルランド国境の扱いでも苦慮する英政府は、EUの一部枠組みに残るかどうかの決断を迫られている。

 「レッドライン(交渉の譲れない一線)を考え直してほしい」。ロンドンで二十六日に開かれた英自動車製造販売協会(SMMT)の大会で、ハウズ会長は英政府に強く要求した。

 グレイリング運輸相が登壇し「離脱後もEUと摩擦のない通商協定は可能」と話すと、会場から「離脱して摩擦がないわけないだろ」と悲痛な声が上がった。米フォード・モーター担当者は「最近の仕事は離脱対策ばかり」と嘆いた。

 「レッドライン」とは、EUの「関税同盟」を指す。メイ首相は「完全な離脱」を要求する与党内の強硬派に配慮し、「関税同盟も抜ける」と明言している。

 EUは、関税同盟を抜けると「欧州大陸との物品のやりとりに通関手続きが発生する」と英国に警告。自動車業界は部品の流通が滞ることになり「計り知れない打撃」を受ける。

 英国の弱みは、自動車産業のほとんどを日本やドイツなど外資に頼っており、撤退する可能性があること。トヨタ自動車など日系メーカーは具体的な要求を避けてきたが、今回SMMTを通じて「最低でも関税同盟の残留」を明確に求めた。欧州航空最大手のエアバスも英生産拠点からの撤退を示唆し始めている。

 「関税同盟」は、EUとの交渉で最難関といわれる英領北アイルランドの国境の扱いにも深く関係する。EU加盟国のアイルランドと陸続きの国境は、紛争の歴史を乗り越えるため自由な往来を国際合意で保証している。EUはこの状態を維持するためにも、関税同盟の残留を勧めている。

 だが関税同盟に残った場合、米国や中国などと独自の自由貿易協定(FTA)を結ぶことができず、「EUへの従属が続く」と英政府が突き上げられるのは必至だ。

 メイ政権は、難民問題などで揺れるEUの混乱に乗じて結論先延ばしを図るが「夏休みを考えれば(結論を出す)十月まで時間はない」(鶴岡公二・駐英大使)。外資による包囲網は着々と築かれている。

 <関税同盟> 加盟国間で物品に関税をかけないことで、域内の物の流れを自由にする仕組み。「単一市場」と並ぶEUの柱の一つ。多数の部品を国をまたいで調達、加工する欧州自動車産業には不可欠となっている。ただ非加盟国に対し共通の関税を課すため、他国と自由に通商協定を結べない。トルコはEU非加盟だが、加工品貿易でEU関税同盟に加わる。

 

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