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【国際】

酸素濃度低下で潜水決断 タイ 水位上昇、間一髪の救出

 【バンコク=山上隆之】タイ北部チェンライ郊外のタムルアン洞窟から、奇跡の生還を果たした少年ら十三人の救出作戦の全容が分かってきた。タイ当局は十一日の記者会見で、洞窟内の酸素濃度の低下が懸念され、作戦開始を決断したと明らかにした。三日間にわたった作戦の最終盤にポンプが故障し、少年らのいた場所の水位がみるみる上昇したといい、間一髪の救出劇だった。

 十一〜十六歳の十二人と男性コーチ(25)が行方不明になって十六日目の八日午前に作戦を開始した。英国や米国、オーストラリアなど各国の精鋭の一部から、「雨期が明けるまで待った方がいい」との意見も。元タイ海軍の潜水士が亡くなる事故が六日に起き、危険と隣り合わせだった。

 現場責任者のナロンサク・前チェンライ県知事らによると、通常約21%の酸素濃度が15%に低下。「12%まで下がると、命を落とす危険性があった」とし、少年ら自身の潜水による脱出に踏み切った。

 少年らがいた場所から出口まで約五キロ。途中には水深五メートルの難所がある。明かりは潜水士の持つライトのみ。水は泥で濁って視界が悪く、流れも速い。少年一人に潜水士二人が付き添い、最初から最後まで潜水士の誰かが必ず少年をつかんでいたという。

 タイ海軍特殊部隊がフェイスブックで公開した映像には、水位が下がっている場所で少年を担架に乗せるシーンも。他の潜水士が加勢し、狭くて急な坂をロープを使いながら運ぶ。「世界が決して忘れることのない作戦」と紹介している。

 当初は訓練された潜水士でさえ、出口まで五時間かかった。実際は最大でも三時間四十分に。作戦中の三日間は降雨量の減少と、ポンプの排水作業の進展で出口までの二キロはほぼ歩ける状態だった。

 だが、作戦三日目の最後の一人が脱出する瞬間、少年らがいたわずか二十五平方メートルの場所に大量の水が流れ込んだ。潜水士の一人が「ポンプが故障した」と叫んだ。作戦開始が少しでも遅ければ、作業がより困難になったとみられる。

 懸念されたのは少年が潜水中、恐怖などでパニックに陥ること。最悪の場合、潜水士も命を落とす。当局は詳細を明らかにしていないが、少年がパニックを起こさないようにするための薬を使った可能性がある。

 十日の作戦完了から一夜明けた会見で、ナロンサク氏らは「各国の潜水士たちが集まり、言葉や国籍の壁を乗り越えて成功させた。少年らを無事に救出できたこの経験は今後、世界の教訓になる」と語った。

 

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