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【国際】

ロヒンギャ流出1年 遅い迫害対策 帰還遠く

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 【バンコク=北川成史】ミャンマーで治安部隊などに迫害されたイスラム教徒少数民族ロヒンギャの大量流出が始まってから二十五日で一年になる。隣国バングラデシュに逃れた約七十万人の帰還は事実上ゼロ。迫害に対するミャンマー政府の調査は歩みが遅く、難民が安心して帰還できる状況にはほど遠い。

 「所要期間を定めるのは難しい。どれだけ早く完了させたいかをバングラデシュも決めなくては」。ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相は二十一日、シンガポールでの講演で帰還遅れの責任回避とも取れる発言をした。

 ミャンマーとバングラデシュは難民帰還を一月に開始すると合意。ミャンマーは四月、国境沿いの緩衝地帯から戻った一家族を初帰還として発表したが、両国が合意した手順での帰還作業は動いていない。最大の問題はミャンマーの国内事情にある。

 「推計二万四千世帯で人が殺され、十一万五千戸が焼かれた」。オーストラリアなど五カ国の研究者が十五日、昨年八月以降にバングラデシュに逃れたロヒンギャらへの聞き取りに基づく報告書を公表。帰還の前提として九割以上の回答者が市民権付与や加害者訴追、生活再建などを挙げた。

 難民大量発生の直前、故コフィ・アナン元国連事務総長らによるミャンマー政府の諮問委員会がロヒンギャへの市民権付与を妨げる国籍法見直しを提言したが、実践されていない。国際世論に押され、同政府は七月末、人権侵害調査の独立委員会を外国人も含めて設けたが、調査方法が明確でなく実効性が疑問視されている。帰還協力するため六月にミャンマーと覚書署名した国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国連開発計画(UNDP)もいら立ちを募らせる。

 両機関は八日、「(ロヒンギャが住む)ラカイン州の状況を具体的に改善するようミャンマー当局に促す」声明を発表。市民権問題を含めた争いの原因への対処を求めている。

<ロヒンギャ> ミャンマー西部ラカイン州を中心に暮らすイスラム教徒少数民族。人口約100万人。ミャンマー政府は先住民族と認めず、多くがバングラデシュからの不法移民として扱われ、市民権を持たない。難民流出は度々起きてきたが、昨年8月25日にロヒンギャが多数派の同州マウンドー周辺の武装勢力が警察施設などを襲撃。治安部隊が反撃に出て掃討したのを機に激しい迫害を受け、過去最大規模の難民が発生した。

 

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