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【国際】

「領土抜き平和条約を」 プーチン氏、首相に提案

 【ウラジオストク=栗田晃】ロシアのプーチン大統領は十二日、極東ウラジオストクの東方経済フォーラムで、安倍晋三首相に対して「一切の前提条件なしで、年内に平和条約を締結しよう」と提案し、北方領土問題を棚上げして平和条約交渉を急ぐよう促した。 

 プーチン氏は平和条約締結後「友人として全ての係争中の問題を解決しよう」とも主張。プーチン氏が公の場で領土問題の先送りを明確に打ち出したのは初めて。タス通信によると、ロシアのモルグロフ外務次官は「日本側に前もって明らかにしてはいなかった。われわれにはすぐに交渉を行う準備がある」と述べた。

 日ロ両政府はこれまで、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)、国後(くなしり)、択捉(えとろふ)の北方四島の帰属問題を解決した後に平和条約を結ぶ方針の下、交渉を続けてきた。日本にとって領土抜きの条約締結は受け入れられず、菅義偉(すがよしひで)官房長官は十二日の記者会見で「北方四島の帰属問題を解決し、平和条約を締結する方針に変わりない」と主張した。プーチン氏は、安倍首相が「アプローチを変えるべきだ」と述べたことを受けて発言した。

◆首相の経済協力先行 逆手に

<解説> 領土問題抜きで平和条約を結ぼうとのプーチン大統領の提案には、ソ連崩壊以降、積み重ねた日ロの北方領土交渉を事実上、振り出しに戻そうとの狙いがあるとみられる。領土交渉を先送りして経済協力を推進する安倍首相の前のめりの姿勢が裏目に出た格好だ。

 プーチン氏は平和条約締結後の領土協議を示唆するが、根本的に矛盾している。実際には平和条約によって国境線が公式に画定されるからだ。このまま日本が平和条約を結べば、ロシアが北方四島を不法占拠している現状を公式に承認することになる。

 プーチン氏が言及する一九五六年の日ソ共同宣言は日ソが領土問題を解決できなかったために平和条約に代えて署名したものだ。

 プーチン政権は二〇〇五年以降、北方四島について「第二次大戦の結果、合法的にロシア領になった」との強硬方針に転換し、帰属交渉を拒否する。溝が深いまま平和条約に進むのは本末転倒といえる。

 一方、パノフ元駐日ロシア大使は一九九〇年代末、ロシアが日本に両国関係強化のため、領土問題を含まない中間的な条約を結ぶ二段階の解決案を打診したと指摘。プーチン氏は「中間条約」に導く戦略を描いている可能性もある。

 いずれにせよ日本が到底受け入れられない提案だが、プーチン氏は「冗談ではない」と念を押した。自民党総裁選で再選後の北方領土問題解決に意欲を見せる首相の熱意を逆手にとってプーチン氏は危ういボールを投げ返した。 (栗田晃)

 

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