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【国際】

落札後に作品細断 神出鬼没 バンクシーって?

星の1つを壊すと全体にひびが入るEU(欧州連合)旗。英仏海峡の街ドーバーで、英国のEU離脱が決まった国民投票後に描かれた

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 英競売大手「サザビーズ」で104万2000ポンド(約1億5000万円)の値がついた作品を、額に仕掛けたシュレッダーで細断し話題になった正体不明の芸術家バンクシー。その神髄は権威にあらがう、路上のグラフィティ(落書き)アートだ。英国の街を歩けば、誰でも気軽に鑑賞できる。 (ロンドン・沢田千秋、写真も)

 金融街の足元、高級ブランド街の頭上、港町の廃屋…。神出鬼没なバンクシーは、見落としそうな場所からもメッセージを投げかける。「バンクシーがただで見られるなんて」。観光客は興奮気味に話す。

 その正体は英西部ブリストル出身のミュージシャン説や、作品の大きさから複数人説も根強い。活動開始は約二十年前。人けのない時間帯や場所を狙い、型板とスプレーを使い瞬時に作品を残す。新作は、ウェブサイトや写真投稿サイト「インスタグラム」で発信。ファンが場所を特定し「聖地」となる。偽物が出回れば、ウェブ上で警告する。作品は英国内のほか、米国やパレスチナなど約百七十カ所に現存する。

米の有名画家・故バスキアの展示会に合わせて描かれた、ロンドン警視庁に職務質問されるバスキアの有名モチーフ=ロンドンで

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 最近の作品は、描かれた壁や建物の所有者がアクリル板で保護するようになったが、ひと昔前はただの落書き扱い。二〇〇八年に約七メートルの大作を消す決定をしたロンドン中心部ウェストミンスター区は「今も落書きは許さない。だがバンクシーと分かれば、状況に応じて判断する」と歯切れが悪い。

 作品に共通するのは徹底した平和主義と、権威や商業主義への批判精神。細断騒動の直前、英美術品仲介サイトが公表した調査で「誰が英国人の代表にふさわしいか」という問いに、千四百人中53%がバンクシーと答え、英王室の42%を上回った。理由は力強さと政治への挑戦的姿勢だった。

 バンクシーは過去にも、自身の作品に高値がついた後、「間抜けども」と題して競売をやゆする作品を発表し、嫌悪感をあらわにした。立派な額に入って競り落とされる作品と、路地裏で雨に打たれる落書きはあまりに対照的。自らの作品の破壊でストリートへの回帰を図ったのか。バンクシーは後日「リハーサルでは成功した」と、全て細断できなかったことを悔やんだ。

 

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