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【国際】

イラン革命40年 消えた理念、民衆失望

1月30日、イランの首都テヘラン郊外のホメイニ廟(びょう)を訪れたロウハニ大統領(手前中央)=大統領府提供(ロイター・共同)

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 イランは十一日、親欧米路線の王制を倒した革命から四十年の節目を迎えた。イスラム法学者を中心とする政教一致の希有(けう)な統治体制を固め、軍事力を背景に中東の地域大国へと成長。だが、トランプ米政権の経済制裁がもたらした国民の閉塞(へいそく)感は、特権階級への批判と革命理念への失望となって表れ始めている。 (カイロ支局・奥田哲平)

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 「アガザデの写真を見ていると腹が立って仕方ない。でも、一般庶民にはどうすることもできない」。レンタカー店経営のハミドさん(38)が苦々しげに電話取材に答えた。米制裁は外国企業の撤退や観光客の減少を招き、経営は苦しい。

 「アガザデ」とは「高貴な生まれ」の意味。政府高官や軍人、聖職者らの子息らを指す。欧米に留学したり、威光を背に商業活動で成功した彼らが派手な暮らしぶりを写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿。反感を買っている。

 元ベネズエラ大使の息子で自動車販売などを手掛けるサーシャ・ソブハニ氏は昨夏、シャンパンらしき瓶を手に「いつまで嫉妬しているのだ。金が無いなら黙れ」と書き込んだ。初代最高指導者ホメイニ師のひ孫アフマド氏は昨年末、乗馬用ヘルメットをかぶる女性との写真がネットに流出。「ぜいたくな乗馬が趣味」と批判を浴びて釈明した。

 保守強硬派が仕掛けた中傷キャンペーンとの見方もあるが、縁故主義や階級格差のまん延は事実だ。既得権益の解体と富の再分配という革命の理念は、大きく揺らいでいる。

 英BBCペルシャによると、昨年一月の世論調査では74%が現状に不満を持ち、三割が「根本的な体制転換がない中での改革に望みを失っている」としている。二〇一七年末から頻発する抗議デモは、生活苦の訴えが体制批判に発展した。

 イランに関する研究機関「アラブフォーラム」(エジプト)のモハメド・アブヌール代表は「経済が好調であれば、貧困層への補助金の見返りに、さまざまな制約を押しつけられた。それが難しくなった今、デモを黙認せざるを得ない」と指摘。革命が学生デモを発端に広がった歴史もあり、政府は強硬な鎮圧策は取れなくなりつつある。

 「『米国に死を』とうたい、ユダヤ人虐殺をほのめかす体制から目を背けない」。トランプ大統領は五日の一般教書演説でイラン敵視策の維持を表明。対するロウハニ大統領はロシアや欧州連合(EU)との関係強化で経済危機や外交的孤立を乗り越える狙いだ。

 だが、核開発制限の見返りに制裁緩和を目指した保守穏健派のロウハニ政権は、国内で苦しい立場になりつつある。

 次期米大統領選でトランプ氏が再選すれば、この半年後のイラン大統領選で、対米強硬派の台頭する可能性が強まる。核開発再開や軍事衝突のシナリオは現実離れした想定ではない。

<イラン革命> パーレビ王朝の脱イスラム化や近代化に反対するデモが拡大し、1979年2月に王制が崩壊した。革命には社会主義勢力など広範なグループが参加したが、内部抗争が激化。80年に新憲法が制定され、ホメイニ師を最高指導者とするイスラム法学者の統治体制が確立した。

 現指導者ハメネイ師は2代目。国防や外交、司法の決定権は指導者が握り、大統領は行政府の長にすぎない。79年11月には首都テヘランで米国大使館占拠事件が発生し、米国とイランが断交。革命は世界中のイスラム復古運動に波及し、イラクやシリアなどでの影響力を拡大した。

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