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■書 評

国産旅客機MRJ飛翔

国産旅客機MRJ飛翔

[著者]前間 孝則

大和書房 / 1890円


[評者]山岡 淳一郎 (ノンフィクション作家)

■オールジャパン利害超えて

 本書は、国家と巨大企業の「選択と集中」を鋭く問う。先端技術の粋を集める航空機産業は、製造業の高度化を導く国家のステイタスシンボルであり、政府の支援が不可欠なビジネス分野だ。

 世界の民間機市場のシェアは、ボーイングを擁する米国が22・7%、エアバスを押し立てる欧州22・2%、小型旅客機に強いカナダが8・1%ときて、日本はたった0・2%。昭和三十年代に開発されたYS11が、販売失敗で生産中止されて以来、日本は国産旅客機をつくれなかった。総合重工メーカーは、ボーイングを中心とする海外メーカーの「下請け」に長く甘んじてきた。

 ところが今年三月末、三菱重工を中心とするオールジャパン体制による七十−九十六席の小型機「ミツビシ・リージョナル・ジェット(MRJ)」の事業化が、正式決定されたのだ。このプロジェクトの全貌(ぜんぼう)に迫ったのが本書だ。政府が一千億円超といわれる開発費の三分の一を援助するのに加え、トヨタが資本参加してオールジャパン色が濃くなった。MRJは、従来機より約30%も燃費を改善し、騒音も抑える。その鍵は軽くて強い機体の「炭素繊維複合材」が握る。この素材を提供するのが世界的企業の東レだ。トヨタは東レの技術をクルマに転用しようと考えているようだ。

 しかし新規参入は甘くはない。カナダ、ブラジルに加え、厖大(ぼうだい)な国内需要を持つ中国、ロシアもエアバスやボーイングと提携して小型機分野で先行する。MRJは千機の受注を目指すが、いまだ全日空の二十五機にとどまる。ブラジルは日本政府の補助金がWTO(世界貿易機関)の自由貿易の原則に抵触すると揺さぶりをかけてきた。

 著者は「個々のメーカーの利害やメンツを超え、日本の産業全体として大局的見地に立ち…」と記す。MRJの就航開始予定は二〇一三年。その動向から目が離せなくなってきた。


まえま・たかのり 1946年生まれ。元石川島播磨重工業社員。著書に『国産旅客機が世界の空を飛ぶ日』など。


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