■書 評
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マッカーサー
[著者]増田 弘 著
中公新書
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1155円
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[評者]成田 龍一
((日本女子大教授))
■戦中・戦後を貫く視点
外国籍の人物で『日本史』教科書に登場してくる人物といえば、何といっても日本を開国に導いたペリーと、本書の主人公のマッカーサーということになろう。マッカーサーは、GHQ/SCAP(連合国軍総司令部)の最高司令官として、一九四五年秋から五年半あまりの日本占領行政をおこない、日本国憲法の制定にかかわり、公職追放や財閥解体などを実施し、折からの朝鮮戦争にも国連軍の指揮を執った人物として知られている。日本を去るときには、多くの日本人が別れを惜しんだともいう。 このマッカーサーを、本書は第一に日本軍とのフィリピンでの戦闘から説き起こし、日本占領までという長い時期を扱う。また、第二に「バターンボーイズ」と呼ばれるマッカーサー側近たちを中心に、周囲の人間たちの証言や回顧録を用いながら描き出す。 ここから浮かび上がってくるのは、半世紀にも及ぶ軍人生活をし、戦闘に能力を発揮しカリスマ性を持ち組織を率いていくと共に、自意識過剰でワシントンの首脳たちとしばしば対立するマッカーサーの姿である。その確執は、ついにはすべての官職からの解任にまで及んでしまう。またマッカーサーにおけるフィリピン体験の重さで、その統治の延長に日本占領があることも示される。 本書は、マッカーサーと側近の回想記にとどまらず、公文書や日本側の文献を含む膨大な資料に広く当たり、それらを用いて検証を重ねており、バランスのとれた記述となっている。戦闘の過程や占領の様相もていねいに叙述され、新書としては異例ともいえる五百ページにも及ぶ分量をもち、読み応えは十分である。 と共に、本書によって、ひとりの人物を通じて戦中と戦後を一貫した視点でみることもできる。ここには、占領が戦闘の延長にあり、東アジアにおいて四五年以降も戦争が継続しているという歴史意識が脈打っている。
ますだ・ひろし 1947年生まれ。東洋英和女学院大教授・日本政治外交史。著書に『公職追放論』『自衛隊の誕生』など。
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