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■書 評

私たちの戦争責任

私たちの戦争責任

[著者]纐纈 厚 著

凱風社 / 1890円


[評者]奥平 康弘 (東京大名誉教授)

■過去の負債を受け止めて

 本書は『私たちの戦争責任』と題されている所に眼目がある。現今にあっては「私たち」の圧倒的な多くは、直接には戦争体験を持たないから、あのアジア太平洋戦争への「責任」は負うべくもないと考える傾向にある。著者はそういった傾向に強く反対する。過去の日本がかかわってきたすべての戦争政策は、これまでずっと清算されずに引き継がれてきていて、現在もなお生き残って政治経済体制に「無責任」政策をとらせている。そして「私たち」の多くは、それに順応して過去の香しくない歴史の総体を忘却のかなたに押しやり、特にアジアにおける誤った外交・経済政策を無反省に受容している、とはなはだ批判的である。

 日本がアジアの人びとに明治以来負ってきた負債を、世代を超えて「私たち」が厳正に受け止め、それから得た教訓を踏まえて、現代における国際関係に反省的に、積極的に生かしていくこと、そのことが「私たちの戦争責任」の負い方として要請されているのだ、と著者は論ずるのである。

 ぼくはこうした、著者のいわば「批判的連続史観」とでも呼ぶべき物の見方に同調するところが多い。とりわけたとえば「田母神論文問題」に象徴される反動的な歴史修正主義――「日本は“侵略国家”ではなかった」というほとんど日本礼賛論になっている史観――がある種のブームになっている現今の大衆政治ムードとの脈絡においてみれば、本書がもつ意味は重大深刻である。

 本書は「田母神論文」の解毒剤として有効であるばかりではなく、日本が二十一世紀の国際関係において「名誉ある地位」を占めたいという願望(日本国憲法前文)を実行する指針を考案するうえでも有意義である。

 おわりに一つ疑問を。著者は、「聖断論」を戦前と現代をつなげる指標としてあげる。しかし、現代天皇制が連綿として残っていることの実体は、一体何なのだろうか。


こうけつ・あつし 1951年生まれ。山口大学教授・日本近現代史。著書に『文民統制』『監視社会の未来』など。


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