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■書 評

ワーキングプア時代

ワーキングプア時代

[著者]山田 昌弘

文芸春秋 / 1400円


[評者]古田 隆彦 (現代社会研究所長)

■制度を見直す大胆な提案

 一生懸命働いても、人並みの生活ができない人が増えている。非正規の雇用者、零細な自営業者、大学の非常勤講師など「ワーキングプア」とよばれる人たちだ。背景には一九九〇年代後半からの構造的な変化がある、と著者は考える。

 経済のグローバル化、IT化、サービス化などに、産業・雇用政策の規制緩和が加わって、非正規雇用が増え、伝統的自営業が衰退した。仕事や家族の多様化も進んだから、生活設計が「予測不可能」になっている。

 となるとセーフティーネットとして社会保障・福祉制度に期待が集まるが、残念ながら現在のそれは抜け穴だらけだ。生活保護費より低い最低賃金。非正規雇用者には出ない失業保険。老親の年金で暮らす壮年、孫の年金を払う祖父母。正規と非正規の妻では国民年金保険料や遺族年金に大差が出る。受領年金の高低や同居子女の有無で高齢者の生活格差が広がる。夫婦とも正社員でないと育児休業は無理など、現制度は複雑で矛盾が多すぎると著者はいう。

 なぜなのか。現在の諸制度は、フルタイムで働けば十分収入が得られ、仕事や家族の将来も予測できた高度成長期の産物で、その後の社会変化に立ち遅れているからだ。

 そこで、著者は現制度を元から見直し、全国民に最低生活が可能な金額を給付する「ミニマム・インカム」、または課税最低限以下の収入者に一定割合で税金を戻す「負の所得税」を提案する。

 これらを基盤にしたうえで、保険料納付分をマイレージに換算し、蓄積分に応じて年金を払う「年金マイレージ制」や、子育て家庭に給付金を加増する「親保険」を上乗せする、というものだ。

 社会学者の大胆な提案には公的保障のあり方、公平性、経過措置などで議論があろう。だが、社会保障専門家の改善案よりはるかにわかりやすい。今一番求められているのは単純明快で誰にでも理解できる制度なのだ。


やまだ・まさひろ 1957年生まれ。中央大教授・家族社会学。著書に『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』『「婚活」時代』など。


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