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■書 評

中国乙類図像漫遊記

中国乙類図像漫遊記

[著者]武田 雅哉

大修館書店 / 2940円


[評者]栗原 裕一郎 (評論家)

■B級アートの珍妙な味わい

 数年前に話題になった北京の石景山遊楽園を憶(おぼ)えておいでだろうか。ディズニーランドを無許諾でパクったあの公営遊園地だ。ディズニーのみならずドラえもんやキティちゃんなどまで闊歩(かっぽ)するキャラクターの闇鍋(やみなべ)状態もさることながら、デッサンが微妙に狂った似非(えせ)キャラぶりがおかしいやらもの悲しいやら。

 今は撤去されたそうだが、中国の無法に本気で腹を立てる人から、珍妙な味わいにニヤニヤする人まで反応が分かれた。

 ニヤニヤしてしまったあなたは本書の読者だ。「中国乙類図像」という厳(いか)めしい字面は、かの国の味わい深い図像群を「こいつぁオツだね」と眺める様子を表したシャレ。著者は中国文化を研究する大学のセンセイだが「この本の内容も、千のうち、九九七くらいはウソかも」という適当…もとい気楽さで書かれた、著作権とかカタいこと抜きにせっかくのB級アートを面白がろうじゃないかという無責任…失礼、エンターテインメント精神にあふれた読み物になっている。

 紹介される“作品”たちは、日本ではまずお目にかかれない珍品・迷品ばかり。原型がかろうじてわかるかというほどに変容した鉄腕アトム、中華風味のロボットや未来像、近代化で突如隣人となった「電気」とつきあうための手引書、大躍進政策時代に豊作の記号として蔓延(まんえん)した巨大野菜や巨大豚、読書という悪癖をたしなめる漫画、近代図画を彩る糞便(ふんべん)ゲロ等々。こうしたレアものをさらり差し出す手際は飄逸(ひょういつ)なだけに、かえってプロの凄(すご)みを滲(にじ)ませる。

 二〇〇〇年に発覚した発掘捏造(ねつぞう)事件を著者は「つまらない」という。学者も世論もマジメに怒って、捏造の張本人もマジメに謝った。そして「わが国は、挙国一致のすてきな良識国家になりました」というのだ。常識や正論に対し眉(まゆ)に唾(つば)をつけてみる。乙類への偏愛は、そんな批判精神の現れなのである。


たけだ・まさや 1958年生まれ。北海道大大学院教授・中国文化論。著書に『楊貴妃になりたかった男たち』など。


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